マンションの相続放棄で増える管理組合への負担
相続放棄されてしまうと、管理費や修繕積立金その他費用が滞納され、組合運営に支障が出、ほかの管理組合員に負担がかかる事例も報告されています。
相続放棄されると、管理費や修繕積立金の滞納などの債権を持つ人などが被相続人の最後の住所地にあるある家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができます。
ほとんどの場合に弁護士が「相続財産管理人」になります。相続財産管理人は物件を売却したお金で管理費、修繕積立金の滞納分やローンの残額などを債権者に支払い、残れば国庫に納めるしくみです。
相続財産管理人は相続財産を原資として債権者等に返済をすることができ、不動産を売却して換金し支払いに充てることもできますが、不動産(マンション)を売却する前には別途家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
相続財産管理人の選任申立てには申し立ての費用の他にその相続財産管理人へ支払う報酬や経費に充てるために予納金を納める必要がありその費用は管理組合が一時的に負担しなければなりません。
相続財産管理人は家庭裁判所が選任した弁護士が行うことが一般的ですが、その職責として相続財産の管理や債権者等への債務の弁済を行う仕事をこなすことになりますから、一定の報酬の支払いが必要です。
原則として報酬は相続財産から支払われますが、報酬が不足すると困るので一定の予納金の納付を裁判所が求めることがあります。管理組合が申立人の場合には予納金は管理組合が管理費から支払うことになります。ですから管理組合は予納金を準備しておく必要があります。
金額としては、事案により異なり裁判所が決めますが、概ね100万円~150万円が必要になります。
金額がかなり大きいことと、そのマンションが思ったより高く売れない場合など相続財産だけで報酬額が賄われない時には予納金が充てられ、そのお金は戻ってこない場合もあります。
ですから、「相続財産管理人」の選任申し立てを管理組合で行う場合には総会の決議を得ることでトラブルの防止ができると考えます。
相続財産は相続財産管理人の報酬よりも先に各債権者への弁済等に充てられることになり、それら清算が終わった後に相続財産管理人が報酬支払の申立てを裁判所に行います。
管理組合によっては、自分たちのマンションの物件があまりにも低い金額で取引されることでマンション全体の資産価値に影響することを懸念して、管理規約などを改正し、管理組合を法人化して管理組合でそのお部屋を買い取り規約共用部分として「集会室」や「ゲストルーム」として利用しているところもあります。
松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表