開業医だからこそ「利益」を考えなくてはいけない
クリニックを開業する理由は人それぞれでしょう。
家族と過ごす時間やプライベートな時間を確保したい。念願だった自分の城を持ちたい。組織のルールに縛られず、自分のスタイルで診療をしたい。地元密着型のクリニックで地域医療に貢献したい…。モチベーションは人それぞれでよいと思うのですが、夢を実現するためには現実も見据えなければなりません。端的にいうと、継続するためには「利益(お金)」のことを考えなければならないのです。そこは組織に守られていた勤務医時代とは大きく異なるところでしょう。
クリニックの経営モデルを3つ、それぞれの特徴とともに紹介します【図表】。
(1)医業収入追求型(収入規模は大きいが、利益率は低い)
医業収入の拡大を追求したクリニックです。【図表】の「い」や「う」がこれに該当します。
開業するうえで集患力がキーになるので、人口が多い、人通りが多い地域等、開業する立地の選定にはこだわらなければなりません。駅前や商業施設等、集客力がある場所で開業するにはテナント賃料や保証金も高くなります。
また集患のためには、広告宣伝(看板、ホームページ、口コミツール)にも資金をつぎ込んでいかなければなりません。在宅部門を併設して訪問診療に手を広げることも考えられるでしょう。訪問看護師や医事スタッフの配置や夜間当直のドクターの確保が必要であることを考えると、人件費率は必然的に高くなります。多くの外来患者を受け入れるために2診、3診体制にすることも選択肢になりますが、ドクターの人件費が収益に響くことも念頭に置いておくべきでしょう。おおむね総勢30名規模の「う」では売上1億8000万円のうち利益が6000万円と、どうしても利益率は低くなります。
この経営モデルは、院長一人のときは高収益体質を保てますが、規模拡大に伴いスタッフ数が増えると利益率は下がっていきます。クリニックには価格決定権がないため、自由診療を拡充しない限り、診療報酬がマイナス改定された際には経営を直撃し、人員整理などの大規模なリストラを強いられる可能性があるので、経営管理が求められます。