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連載クリニック経営はレセプトが9割【第27回】

「企業の人件費削減」と「クリニックの人件費削減」の致命的差【医療機関コンサルが解説】

病院経営医師向け

「企業の人件費削減」と「クリニックの人件費削減」の致命的差【医療機関コンサルが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

クリニックの経営状況を改善するには、どうすればよいのでしょうか。改善策として、人件費の削減を考えつく院長も少なくないでしょう。しかしクリニックにとって、安易な人件費削減がかえって経営を苦しめる可能性があることをご存じでしょうか? 医療機関コンサルの筆者が解説します。

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クリニックで「経営改善のために人件費削減」は悪手

企業においては、収益率を高めるために「人件費を削減する」という発想はごく一般的です。近年、大手企業が軒並み、早期希望退職者を募集しているのも、クビを切らずに人件費を削減したいからでしょう。クリニックにもいえることですが、人件費は経費のうち非常に大きなウエイトを占めています。

 

しかし、クリニックにおいては、生活が脅かされるような状況を除いて「人件費の削減」は避けるべき手立てだと私は考えています。医療や介護は多くの人の手を必要とする仕事です。クリニックで看護師や医事スタッフを減らしてしまうと、サービスが低下し、医療の質が担保できなくなる可能性があるからです。

 

確かに試算表等を見ると、人件費はいちばん目につくところでしょう。自社調査ですが、平均的に内科では15%、整形外科では30~40%を占めていますから、「人件費を削りませんか?」と提案する税理士もいます。ただそこにメスを入れてしまうと、結果的にドクター自身にしわ寄せがくるのです。

「人件費をかけるメリット」はこれだけある

仮に内科クリニックで20%の人件費だとして、それはあくまでも数字上の話です。それは必ずしもマイナス要因ではなく、むしろ手厚い医療サービスの源泉となり、患者満足度を高めているかもしれません。ドクターが自分のしたい診療をするための投資と位置づけられるかもしれません。

 

また、「正社員になりたい」と希望する医事スタッフがいる場合も、頭を悩ませるでしょう。パート勤務という不安定な立場による定着率の低さを改善するために、社員登用するのも一つの手だと思います。人件費がかさむのはネックですが、定着率の他にスタッフのモチベーション向上が期待できる他、自分自身の人事・労務面でのストレスや労力を減らすこともできます。

 

人件費はドクターが安心して診療に専念し、健全経営を続けるための「安心料」。そう捉え直してみてはいかがでしょうか。 

経営改善には「スタッフとの協力」が不可欠

クリニックの経営状態を改善するのは、経営者自身です。しかし、クリニックは組織でもあるので、他のスタッフの“協力”が欠かせません。

 

当社では、クリニックのスタッフ向けに、接遇マナー研修も行っています。というのも、クリニックのスタッフは企業のような体系立てた研修を受けていないため、一般的な接遇マナーですら身についていない人が多いからです。見方を変えれば、標準レベルのマナーさえ身についていれば、他のクリニックとの差別化ができます。しかし、真の狙いは、研修を通じて醸成されていく一体感がクリニックの組織風土として根づいていくことです。

 

ドクターが開業することで大きく変わる一つの要素として、スタッフとの関わり方が挙げられます。勤務医時代は、職種は違ったとしても、お互いに「雇われている側」でしたが、開業医になると「雇う側」と「雇われている側」に分かれます。そこには天と地ほどの差があるといっても過言ではありません。「雇う側」と「雇われている側」、いわば労使の関係になると、お互いの利害が対立することになるからです。

 

勤務医時代であれば、同僚として軽く聞き流していれば済んだ愚痴や不平不満は、開業医になった途端、直接的であれ、間接的であれ、その矛先が向けられます。そして、それに対する対応いかんによって、経営者としての度量や才覚を測られるのです。

 

その中身は「XXがない(できていない)からできない」等、他力本願な姿勢に基づく言い訳めいた内容だったとしても無下にするわけにもいきません。だからといって、自分一人で背負う必要もありません。

 

必要なものは必要としている人が作ればいいという考えのもと、「なければ自分たちで作る→みんなで共有する」プロセスを繰り返して、働きやすい環境を自分たちで作っていけばいいのです。マニュアルが必要であれば作成したり、患者からのクレームは全員で共有して善後策を検討したり…。

 

要するに、一人ひとりがクリニックの一翼を担っているんだという実感のもと、クリニックの課題を「自分ごと」として捉えてもらえれば、指示を出さなくてもスタッフは動いてくれます。これを習慣化することで「スタッフが自ら育つ」組織風土が醸成されていくのです。

 

決して、パートスタッフしかいないから皆でなにかに取り組むのは無理だと、はなから諦めないでください。どんなに小さいことでも、各々ができることをすればいいのです。地道で泥臭い積み重ねこそ、「強いクリニック」を築くいちばんの近道です。

 

 

柳 尚信

株式会社レゾリューション 代表取締役

株式会社メディカルタクト 代表取締役

 

 

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株式会社レゾリューション 代表取締役
株式会社メディカルタクト 代表取締役 

会計事務所系コンサルティング会社にて、医療機関のコンサルティングを行う。

経営戦略立案、管理会計、人事労務ほか事業承継(M&A)も手掛ける。

また、各地区医師会やハウスメーカー、医療機器メーカー等で、セミナー講師として講演を行い、日経メディカルオンラインでコラム「開業の落とし穴」を第51回まで執筆するほか、日経ヘルスケアで「診療所経営駆け込み寺」を連載する等、セミナー講師・原稿執筆の実績も多数。

著者紹介

連載クリニック経営はレセプトが9割

※本連載は、柳尚信氏の著書『クリニック経営はレセプトが9割』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

クリニック経営はレセプトが9割

クリニック経営はレセプトが9割

柳 尚信

幻冬舎メディアコンサルティング

人口は減少の一途をたどり、クリニックも激しい生存競争にさらされる時代。売上の伸び悩み、他院との差別化がうまくできていないなど、経営に頭を抱えるドクターが増えています。 そんな方々を助けるカギとなるのが、診療報…

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