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今後、院長が「経営者として」求められる役割
コロナ禍において、大幅な減収減益の憂き目に遭ったクリニックは少なくないのではないでしょうか。
当面の資金繰りを最優先し、融資による資金調達を行い、スタッフの雇用調整により人件費をコントロールする。家賃の減額要請により固定費を削減し、資金を確保する…。
ここまですれば当面は凌げるかもしれませんが、あくまでも対症療法です。「経営者」の仕事は、これからのクリニック経営の舵取りをすることなのです。
「考えること」「決断すること」が、院長(経営者)の重要な役割です。リスクのない選択等ないといっていいでしょう。多くの場合は、なにかしらリスクをはらんでいることを前提として意思決定をします。このリスクを正しく評価し、受け入れ、できる限りコントロールしていくにあたり、最後に超えるべきは精神面の壁です。要するに、腹をくくれるかということです。
この機会に、これまでの“ざる経営”を見直しましょう。なんとなくやり過ごしてきたことにも向き合い、腰を据えて問題解決に取り組みましょう。今年の夏のボーナスは支給しますか? 冬のボーナスはいかがでしょうか? 背に腹は替えられない状況においては、スタッフと痛みを分かち合うことをお願いしなければならないこともあります。あるいは、スタッフに厳しい要求を突きつけなければならないかもしれません。「痛みを伴う」改革は必要なのです。
コロナによって、院長の経営力が試されています。これまで人任せにしてきたことに目を向けてください。自らが判断し、ご自身の意思やビジョンをスタッフや関係者に伝えていってください。そして、みんなで目標を共有しながら、苦境を乗り越えていけるクリニックにしていきましょう。その過程で培われた団結力や一体感は、クリニックの財産になります。
避けては通れない「スタッフの不満や要望」
経営者になると一度は直面するのが、「スタッフの不満や要望にどう対応するか」という問題です。
その一つが給料に関するものです。スタッフから「給料を上げてほしい」と相談されたXクリニックの事例をご紹介しましょう。
開業してから5年が経つXクリニックでは、地元でも人気があります。スタッフの患者対応がすばらしいことがその理由の一つです。看護部門の主任看護師やリハビリ部門の主任PTも他のスタッフの手本となるべく、リーダーとしての役割を発揮しています。スタッフを取りまとめるA院長の人望も組織の好循環に役立っています。
そんなある日、改まった様子の主任PTから持ち掛けられたのが例の相談です。
「開業当初から比べると患者も増えてきました。私も頑張って自分のファンを作ってきたように思います。今の給料はクリニックへの貢献度に見合っているとは思えません」とのことでした。
院長がなにも言えずにいると、彼はこう続けました。
「上げていただけないのであれば、声をかけられている他のクリニックに行こうと考えています」
院長はその場での返事を保留しました。信頼している看板スタッフを手放すのは惜しいけれど、これを受け入れると他のスタッフの給料も上げなければならなくなり、こういった交渉が常態化しかねない…。
そんな葛藤の末、最終的に院長が出した結論は「NO」でした。残念ながら直訴した主任PTは退職することとなり、クリニックには大きな痛手となりましたが、クリニックを守るための経営判断としては妥当です。他のスタッフも院長の毅然とした態度に敬意を払い、かえって院内の結束は強まったのでした。
昇給は対症療法…給料で人はつなぎ止められない
確かに給料を上げることでスタッフの不満は一時的には解消されます。しかし、人間には欲があります。いつか必ず同じことが起こります。相場より高い給料で迎え入れたスタッフは、よりいい待遇を求めて他の職場へ移る傾向があります。
給料はスタッフのモチベーションを上げる一つの要素に違いありませんが、そればかりでは人をつなぎ止められません。「やりがい」の部分にフォーカスしたスタッフマネジメントや働きやすい職場環境を整備することが重要です。スタッフとのコミュニケーションを重ねて、関係性を築いていきましょう。
柳 尚信
株式会社レゾリューション 代表取締役
株式会社メディカルタクト 代表取締役
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