永遠に輝くのはダイヤモンドではなく「金」なワケ
どんなに長いあいだ地中に眠りつづけていたとしても、純度の高い金は掘り出され、泥やほこりをぬぐい取った瞬間から光り輝きます。
これは、地球上に存在するさまざまな金属の中で、金だけがまったくと言っていいほど酸化しないからこそ持ちあわせている貴重な性質なのです。
■「ダイヤモンドは永遠の輝き」ではないワケ
貧しいイギリス家庭に生まれたセシル・ローズという野心家が、英領南アフリカにわたって、ダイヤモンド鉱山で文字どおり一山当てて、デビアスというダイヤモンド採掘企業を設立しました。
この会社は、ローズの死後事業を継承したユダヤ系ドイツ人オッペンハイマー家のもとで、ダイヤモンド供給の一大カルテルにのし上がります。そのころ、デビアス社が採用した秀逸なキャッチコピーが、「ダイヤモンドは永遠の輝き」でした。
ところが、ダイヤモンドは永遠の輝きを持ちません。もともと地球上にまさに掃いて捨てるほど存在する炭素という元素がたまたま縦にも横にも奥行き方向にも均等に結晶したのがダイヤモンドです。
透明に光り輝くので、どこにでもある炭や石炭などとはまったく違う物質に見えます。ところが、もとは炭素ですから、比較的かんたんに燃えてしまいます。摂氏3000度強で、燃え始めます。ふつうの家が火事になっても3000度程度の熱は出ます。とくに石油化学製品などの建材をあちこちに使って燃焼効率のよくなっている最近建てた家なら、ほぼ確実に燃え尽きるでしょう。
燃え尽きたあとに何が残るでしょうか。炭や石炭を燃やしたあととまったく同じ、炭素の粉だけです。また、超硬合金などの加工には刃先を人工ダイヤモンドにした工具を使うことから、ダイヤモンドは硬くて頑丈だと思われがちです。
ところが、結晶にちょっとしたゆがみやひずみのあるダイヤモンドは、わずかな圧力を加えられただけでも、そのゆがみやひずみにそって、完全に割れてしまったり、亀裂が入ったり、いびつになったりします。
割れたり、亀裂が入ったりしたダイヤモンドの鑑定価格は当然暴落します。気づきにくいのは、ほんの少しいびつになったダイヤモンドの価値もまた大幅に下がることです。多くのダイヤモンドが、入射角・反射角を計算しつくした多面体にカットされることで、きらびやかな輝きを得ています。
この華やかさは、ダイヤモンド自体に肉眼では気づかないほどわずかな変形が生じても、計算どおりには再現できなくなり、当然鑑定価格は大きく下がってしまいます。こうして見てくると、ダイヤモンドの輝きは永遠どころか、じつにはかないものだとわかります。
「資産防衛には、金よりダイヤモンドのほうが適している」と主張する本も出回っています。ですが、ダイヤモンドのように価値の移ろいやすいものに、自分が長年にわたって蓄積してきた富を守る役割を担ってもらうのは、あまり得策とは言えないでしょう。
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