(写真はイメージです/PIXTA)

人類の歴史では貝殻やウイスキー、金など、さまざまなものが貨幣として使われてきました。経済アナリストの増田悦佐氏の著書『資産形成も防衛も やはり金だ』(ワック株式会社)より、一部を抜粋・編集して解説します。

「おカネ」の3つの機能…いろいろなものの貨幣の歴史

昔から、おカネには3つの主な機能があると言われてきました。順番にご紹介していきましょう。

 

1つ目は交換の媒介となることです。すべてのものを物々交換していた時代には、交換は大変な作業だったでしょう。自分が持っているものをほしがっている人が、たまたま自分がほしがっているものを持っていたという巡り会いは、なかなか起きるものではありません。

 

おまけに、お互いに相手が持っているものをほしいという場合でさえ、自分の持っているものいくつと相手の持っているものいくつを交換すれば、ほぼ公平な条件で交換したことになるのか、見当もつかないというケースが多いでしょう。

 

でも、だれもが自分が持っているものを売ってまずおカネを手に入れて、そのおカネで他人の持っているものを買うことにすれば、ずいぶん楽になります。

 

だれもが自分では使わない持ちものをまずおカネに交換して、そのおカネでほしいものを買うことにすれば、お互いに相手の持っているものをほしがっているという幸運な巡り会いがなくても、取引が成立します。

 

2つ目は価値の尺度となることです。どんなものでも、おカネをいくら出せばどのくらいの量が手に入るかがわかれば、ダイヤモンドと炭団(たどん)、絹織物とたわしのように、性質や使い途が極端に違うものでも、値段がいくらかということで、価値を比べやすくなります。

 

同じアップルの名前がついていても、りんご1個とアップル社製の携帯電話機1台では携帯のほうがずっと高いというだけではなくて、何百倍、何千倍高いのかが具体的にわかるということです。

 

3つ目は価値を蓄蔵する手段となることです。いますぐ使うわけではない財産を持っている場合、どんなもので持てば都合がいいでしょうか。だれでもいつでもほしがるもので、消えてなくなることも、価値が目減りすることも、腐ることもないもので持っているのが、いちばん都合がいいでしょう。

 

そう考えると、何を買うにも使えるおカネを持っていることがとても好都合だということになります。それでは、そのおカネはいったいどんなものでできていると、上にご紹介した3つの機能をうまく果たせるでしょうか。

 

1つ目の交換手段としては、あまりどこにでも転がっているようなものではないけれども、手軽に人から人に渡せるものならなんでもいいように思えます。実際に、いろいろなものが貨幣として使われてきました。

 

丈夫で割れることの少ない貝殻とか、塩のかたまりとか、小動物の毛皮とか。もちろん、少し文明が発展してくると金、銀、銅などの金属が使われました。

 

金属は、目方に応じていくらというかたち(秤量(ひょうりょう)貨幣と言います)でも、コインに鋳造してそこに押した刻印が価値を示す(打刻貨幣と言います)かたちでも、あちこちで使われてきました。

 

ちょっと変わったところでは、独立戦争直前ごろから南北戦争当時までのアメリカ、とくにペンシルヴェニア州、ケンタッキー州、テネシー州ではウイスキーが貨幣として通用していました。

 

あらゆるものを、ウイスキーのグラス1杯とか、1ビンとか、1ダースとかと交換していたわけです。上手に保存すれば歳月を重ねるにつれておいしくなるけど、保存状態が悪いと酢になってしまうワインと違って、比較的長い年月同じような品質を保つウイスキーは、何百、何千という銀行がそれぞれ自前の紙幣を発行していて、信用度に極端な違いのあったドル札より、信頼の置ける交換手段だったのでしょう。

 

ただ、同じようにウイスキーとして流通していても、味は造り手によってずいぶん違うはずです。おいしいウイスキーは自分で呑んでしまい、自分では呑みたくないまずいウイスキーだけが流通するという、典型的な「悪貨は良貨を駆逐する」状態になっていたのではないでしょうか。

 

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資産形成も防衛も やはり金だ

資産形成も防衛も やはり金だ

増田 悦佐

ワック株式会社

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