世界53ヵ国「新型コロナ回復力ランキング」…順位激変のワケ

世界中の人々の生活を大きく変えた、新型コロナウイルス感染症。現在も新規感染者が増加している国がある一方で、コロナ以前の「もとどおりの生活」を取り戻している国もあるなど、「回復力」に大きな差が生じています。格差の原因は何か、今後どのようなことが予想されるのか。米国在住の医師である筆者が解説します。

アジアと欧米で大差がついた「新型コロナの回復力」

2020年3月11日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、新型コロナウイルス感染症の流行を「パンデミックとみなせる」と発表しました。それから1年以上が経過した今、世界各国の感染状況や人々の生活の質はまるで違います。

 

ブルームバーグ・ニュースは、毎月「新型コロナウイルスの回復力ランキング」と題し、53ヵ国の主要経済国を評価しています。最新データ(香港時間5月24日)によると、日本のランキングは、1ヵ月前の7位から14位に後退しました(※1)

 

新型コロナウイルスの回復力ランキングは、53ヵ国において「社会的および経済的混乱を最小限に抑えながら、ウイルスの封じ込めに成功したかどうか」を毎月評価し、毎月最終週に更新されます。

 

ランキングは、以下10の指標(データ元)により解析します。

 

1:過去1ヵ月間における人口10万人あたりの新型コロナ感染者数(ジョンズ・ホプキンス大学)

2:過去1ヵ月間の新型コロナ感染症による死亡率(ジョンズ・ホプキンス大学)

3:パンデミック以降、100万人あたりの死亡者数(ジョンズ・ホプキンス大学)

4:最新データによるウイルス検査の陽性率(Our World in Data)

5:ワクチン接種率(ブルームバーグ・ニュース)

6:ロックダウンのレベル(オックスフォード大学)

7:移動の自由(Google LLC、ブルームバーグ・エコノミクス)

8:2021年度のGDP成長率予測(ブルームバーグ調査、国際通貨基金〔IMF〕)

9:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(保健指標評価研究所〔IHME〕)

10:人間開発指数(国連開発計画〔UNDP〕)

 

データは0~100のスコアで採点され、100が最高、ゼロは最悪のパフォーマンスを示します。

 

ブルームバーグの最新のデータでは、前回1位だったシンガポールは、ウイルスを封じ込めた他の多くのアジア諸国とともに、ランキング2位へと後退しました。日本はワクチン接種率の低迷や感染者の増加、東京オリンピック開催に向けて感染を封じ込めるために政府が緊急事態宣言を拡大したことから、順位を7つ落とし、7位から14位に後退しました。現状、日本はワクチン展開が遅れており、回復力の順位はさらに後退する可能性があります。

 

また、東南アジアと南アジアのいくつかの国では、感染が大流行しています。マレーシアは、新規感染の拡大を抑えるために規制が強化された後、順位を20位から35位まで落とし、ベトナムは11位から23位に後退しました。昨年、新型コロナウイルスの封じ込めに大成功したタイは、刑務所や建設キャンプ、首都バンコクの人口密集地域における感染拡大により13位から27位へ、インドは30位から50位と急落しました。

 

1位のニュージーランドは、国内での感染がほぼなくなり、国民は海外旅行を除いて、パンデミック前の自由な生活が戻りました。ただしワクチンの展開は遅れていて、人口の5%しかカバーされていないために脆弱性が残っています。感染者は少ないものの、高い回復力の維持が厳しくなるかもしれません。

 

今回順位を落とした国々とは対照的に、ワクチン接種をリードする米国とヨーロッパの一部は、ランキングが着実に上がっています。旅行を再開し、マスクの義務を廃止し、パンデミックから回復しようとしています。英国は18位から11位に、米国は17位から13位にランキングが上がりました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

フランスとポーランドは、新規感染が減るにつれて、制限を緩和し、徐々にビジネスや地方旅行を再開することができたため、それぞれ42位から24位、52位と39位へ上昇しました。イタリアはかつて、ヨーロッパにおける新型コロナウイルスとの闘いの震源地になりましたが、感染者の減少に伴い、事業活動の制限と検疫規則が緩和され、37位から30位へとランキングが上がりました。

 

ランキング4位のイスラエルでは、人口900万人のうち60%近くがワクチン接種を完了させており、生活が急速に正常化しています。演劇やスポーツイベントが再開され、屋外でのマスク着用は不要になり、レストランやバーは満席に、学生は対面授業に参加するようになりました。

 

米国では、ワクチンが普及したことにより、今夏は感染が大幅に減るという楽観的な期待が高まっています。

 

ただし今冬については、専門家の間でも意見が割れていて、「ワクチン接種の拒否なども起きていて集団免疫を達成する可能性が低いことや、ワクチンの変異株に対する有効性が低下するなどといった問題から、感染者が再び増加するだろう」といった見解がある一方で、「ワクチン接種の増加により流行が阻止されるか、昨年の冬よりもはるかに危険性が低くなるだろう」という声も聞かれます。

 

いずれにしても、感染状況は、各国のワクチン接種状況が大きく左右するでしょう。

 

※1 https://www.bloomberg.com/graphics/covid-resilience-ranking/

 

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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