東日本大震災は東北地方の中小企業家同友会に前向きな大きな動きを促したという。岩手同友会では会員有志が参加する「エネルギーシフト研究会」が開かれている。中小企業の経営者たちがエネルギーシフトを推進している。その動きを見ていこう。※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業の経営メリットはどこにあるのか?

東日本大震災、ことに福島における原子力発電所の事故は、反原発運動の高いうねりを代表に、原子力安全神話に安閑としていた日本社会に深刻な問題意識を引き起こし、中小企業家同友会に加盟する経営者たちにも同様に大きな衝撃を与えたことは否定できない。

 

結果、福島にとどまらず全国的視野で、今後のエネルギー政策のあり方、原発の安全性、自然エネルギーや再生可能エネルギーによる地域の再生や中小企業としての取り組みなど、総合的に、かつ新たな問題意識をもってエネルギー問題に立ち向かおうとの機運が組織内に急速に高まった。

 

そこで当時の鋤柄修中小企業家同友会全国協議会(中同協)会長(現・相談役幹事)の強いリーダーシップもあって、新たに研究会が立ち上げられることになった。

 

2012年8月のことで、組織の略称は「REES」(The recovery from the Great East Japan Earthquake & the Shift to a “sustainable society”、つまり「東日本大震災からの復興と持続可能な社会をめざして」)と名付けられ、正式名称は中同協東日本大震災復興推進本部研究グループとされた。

 

研究会は18年1月、東京・中野で開かれた会合ですでに18回に達するが、その間、「中小企業家エネルギー宣言」を取りまとめ、16年7月の中同協総会でこれを採択に持ち込んだだけでなく、それに先立ち震災3年目の13年には脱原発・エネルギーシフトの先進国であるドイツ、オーストリア、スイスといった国々へ視察団を派遣した。

 

ここで簡単に中同協における「中小企業家エネルギー宣言」の文言を紹介しておこう。

 

まず基本理念として「エネルギーシフトで持続可能な社会をつくりましょう」を掲げ、「私たちは、命と暮らしを基本とした新しい持続可能な経済社会をつくることをめざします」「私たちは、原子力・化石燃料に依存しないエネルギーシフトに取り組み、地域と日本の新しい未来を切り拓きます」「私たちは、中小企業の力を発揮して、環境経営に取り組み、地域の再生可能エネルギー創出による新しい仕事作りに取り組みます」という3つの方針を謳っている。

 

このREESの活動や「中小企業家エネルギー宣言」に突き動かされるようにして、スタートしたのが被災地の一つ岩手県中小企業家同友会の「エネルギーシフト(ヴェンデ)」というユニークで先進的な活動である。「エネルギーシフト」と聞くと、多くの人は脱原発、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーへの転換を想像するに違いない。

 

だが岩手同友会のそれは、ドイツ語の「ヴェンデ」、すなわち「変革」を意味する言葉を用いていることからもわかるように、単なるエネルギー源の転換ではなく、エネルギーのあり方を本質的に、かつ生活レベルで幅広く問い直そうとの問題意識で成り立っている。さらに言えば、そこに地域に密着した中小企業にとってのビジネスチャンスや、省資源・省エネなど経営メリットを見出そうということでもある。

 

 

清丸 惠三郎

ジャーナリスト

出版・編集プロデューサー

 

 

※初出:清丸惠三郎著『小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月11日刊)、肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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