●足元の日経平均は25日と75日移動平均線の間で横ばい推移、29,000円台の定着に苦戦中。
●ただ、長期的な上昇トレンドは継続中、5月に27,000円台前半まで下落したのも調整の範囲内。
●30,000円回復にやや時間が必要か、各国で経済正常化の動きが広がれば上昇トレンド継続へ。
足元の日経平均は25日と75日移動平均線の間で横ばい推移、29,000円台の定着に苦戦中
日経平均株価はこのところ、やや上値の重い展開が続いています。先月は、米国でのインフレ加速に対する警戒が強まったことなどから、日経平均株価は13日に、一時27,385円03銭の安値(取引時間中、以下同じ)をつけました。その後、徐々に値を戻したものの、5月28日以降は、25日移動平均線と75日移動平均線にはさまれる格好で、おおむね横ばい推移となっています(図表1)。
年初からの動きを振り返ると、日経平均株価は2月16日に年初来高値の30,714円52銭をつけたあと、3月18日の30,485円、4月6日の30,208円89銭、そして5月10日の29,685円41銭と、戻り高値の水準を徐々に切り下げています。そして、現時点では前述の通り、75日移動平均線が上値抵抗線として作用し、日経平均株価は29,000円台の定着に苦戦している状況です。
ただ、長期的な上昇トレンドは継続中、5月に27,000円台前半まで下落したのも調整の範囲内
では、少し長期的な観点で、日経平均株価の立ち位置を確認してみます。日経平均株価は、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ上値抵抗線と、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線によって、上昇トレンドを形成しています(図表2)。足元の日経平均株価は、トレンドを形成する2本線の中にしっかりと入っていますので、長期的な上昇トレンドは継続中と解釈できます。
なお、2020年の春先に発生したコロナ・ショックを受け、日経平均株価は、3月に下値支持線を大きく下抜けました。しかしながら、6月には早々に同線をほぼ回復していることから、長期上昇トレンドは相応に強いことが確認されます。また、日経平均株価は先月、27,000円台前半まで下落しましたが、トレンド内の動きであり、調整の範囲内であることが分かります。
30,000円回復にやや時間が必要か、各国で経済正常化の動きが広がれば上昇トレンド継続へ
また、トレンドを形成する上値抵抗線に目を向けると、2021年2月以降、日経平均株価の上値をおさえている様子がうかがえます。前述の通り、日経平均株価は2月から戻り高値の水準を切り下げていますので、この上値抵抗線が影響している面もあると思われます。この点を踏まえると、日経平均株価はこの先、30,000円の回復には少し時間を要することも想定されます。
ただし、この長期上昇トレンドが維持される限り、日経平均株価が30,000円台を回復し、一段と上昇する余地はあるとみています。トレンドが続くためには、やはり多くの国や地域でワクチンの接種が普及し、経済活動の正常化の動きが一段と広がることが必要と考えます。正常化が進むことは、日本経済や日本企業への恩恵も大きく、日経平均株価にも強い材料になると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の長期トレンドを確認する』を参照)。
(2021年6月9日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト