●展望レポートの経済・物価見通し下方修正が報じられ市場で物価目標達成時期後ずれの声も。
●日銀内で目標達成と政策判断の時期を分ける考えも、政策方針と合わせた総裁の発言が焦点。
今回据え置きを予想、展望レポートの経済・物価見通しや、植田総裁の政策運営の見解に注目
日銀は4月30日、5月1日に金融政策決定会合を開催します。弊社は無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)について、前回3月の会合に引き続き、今回も据え置きを予想していますが、市場でも据え置きはほぼ織り込み済みとなっています【図表1】。なお、今回は「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が公表されるため、植田和男日銀総裁の記者会見における発言とともに、注目が集まっています。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
足元では、トランプ米政権による追加関税の発動によって、世界的に景気の先行き不透明感が強まっている状況です。そのため今回は、日銀の政策委員が展望レポートにおいて、経済と物価に関し、どのような見通しを示すのか、また、植田総裁が金融政策の運営について、どのような見解を述べるのかが、主な焦点になると思われます。以下、これらについて、考察していきます。
展望レポートの経済・物価見通し下方修正が報じられ市場で物価目標達成時期後ずれの声も
まず、展望レポートについて、前回1月の会合で公表された経済・物価見通しは【図表2】の通りです。今回、経済と物価見通しは、複数のメディアが報じているように、弊社も下方修正される可能性が高いとみています。修正の中心は2025年度になり、実質GDPの前年度比伸び率は1月時点の中央値1.1%から1.0%割れに、消費者物価指数(除く生鮮食品、以下コアCPI)は2.4%から2.0%近辺に、それぞれ修正が見込まれます。
(出所)日銀の資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
また、今回の展望レポートでは、2027年度の見通しが新たに示されますが、コアCPIの前年度比伸び率は2%近辺になるとの報道がいくつかみられます。なお、日銀はこれまで、基調的な物価上昇率の2%目標の達成時期について、「見通し期間後半(2025年度後半から2026年度)」としてきましたが、展望レポートで見通しが下方修正されれば、2%目標の達成時期が後ずれし、利上げペースも鈍化するのではないかとの声も市場で聞かれます。
日銀内で目標達成と政策判断の時期を分ける考えも、政策方針と合わせた総裁の発言が焦点
次に、植田総裁の発言における注目点は、①展望レポートで示される経済・物価の見通しについて、その実現の確度(2%目標の達成時期は後ずれするか否か)、②見通しの実現に応じて金融緩和の度合いを調整していくという基本方針、この2点についての見解と思われます。複数の報道によると、①について、日銀内では目標達成時期と利上げ判断のタイミングは結びつけないとの考えもあり、②の基本方針は維持される見通しとのことです。
弊社は日銀の金融政策について4月7日に見通しを修正し、25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の追加利上げ時期を、2025年10月、2026年4月、2027年4月としました(従来は2025年7月、2026年1月、2027年1月)。次回追加利上げは10月とみていますが、この見通しを検証する上で、今会合の展望レポートの見通しと、それを踏まえた植田総裁の発言は、非常に重要な要素と考えています。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2025年5月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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