(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

●注目の日米財務相会談が終了、米国から為替水準の目標や管理の枠組みなどの話はなかった。

●為替に関し引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致した点もほぼ予想通りの結果。

●一般的な表現での為替合意なら投機は後退、今後は関税交渉や日米金融政策の行方に注目。

注目の日米財務相会談が終了、米国から為替水準の目標や管理の枠組みなどの話はなかった

米ワシントンを訪問中の加藤勝信財務大臣は4月24日(日本時間4月25日早朝)、ベッセント財務長官と会談し、為替分野などについて協議しました。加藤氏は会談後の記者会見で、米国からは為替水準の目標や、為替を管理する枠組みなどの話は全くなかったとした上で、為替に関して、引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致したと明らかにしました。

 

また、加藤氏はベッセント氏との会談において、米国による一連の関税措置は極めて遺憾であることを伝え、日米貿易協定との整合性に懸念のある関税措置の見直しを強く申し入れたと述べました。そして、為替について、水準は市場で決定されること、過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えることなどを再確認したと話しました。

為替に関し引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致した点もほぼ予想通りの結果

注目された日米財務相会談でしたが、市場が懸念していたような、米国が日本に対し円安是正を強く求める展開にはなりませんでした。今回の会談については、4月21日付レポート『日米財務相会談の注目点【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』で、為替レートに関して想定され得る米国の対応を4つのケースにまとめ、それぞれに対する為替市場の反応をまとめました。それを再掲したものが図表ですが、今回の会談の結果と照らし合わせて考えてみます。

 

(注)一般的に想定され得る内容。4月21日付レポート「日米財務相会談の注目点」の図表を再掲したもの。 (出所)三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表]為替レートに関し想定され得る米国の対応と為替市場の反応 (注)一般的に想定され得る内容。4月21日付レポート「日米財務相会談の注目点」の図表を再掲したもの。
(出所)三井住友DSアセットマネジメント作成

 

1つめは、「為替については日米財務相の間で緊密な連携を図り、議論を継続する」などの発言にとどまるケースです。日米関税交渉も始まったばかりの段階であることを踏まえると、具体的な為替レートへの言及には踏み込まず、今回はこのケースとなる可能性が高いと考えましたが、おおむね想定内の結果になったと思われます。3つめと4つめのケースは、実現のハードルが高いと判断しましたが、前述の通り、米国側から話はありませんでした。

一般的な表現での為替合意なら投機は後退、今後は関税交渉や日米金融政策の行方に注目

2つめは、ある程度、日米関税交渉が進展した段階で、「通貨の競争的切り下げを回避」などの一般的な表現で、日米の合意が示されるケースです。報道によると、ベッセント氏は24日、早ければ来週にもおおまかな理解を共有する合意に達する可能性があると述べており、2つめのケースに至る公算が大きいとみています。これにより、米国の円安是正要求の思惑を材料とする投機的なドル売り・円買い圧力は後退していくのではないかと考えています。

 

今後、ドル円相場の焦点は、関税をめぐる日米の交渉(2回目は日本時間5月1日か)や、米中の交渉の進展に移り、関税引き下げの方向に向かえばドル高・円安、交渉難航、決裂ならドル安・円高の動きが予想されます。また、日銀金融政策決定会合(4月30日、5月1日)や米連邦公開市場委員会(FOMC、5月6日、7日)において、どのような政策スタンスが示されるかについても、ドル円の方向性に影響を与え得るため、注目されます。

 

 

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日米財務相会談を終えて~今後のドル円相場の焦点は【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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