日米財務相会談の注目点
●今週開催見通しの日米財務相会談では、米国の為替レートについての言及有無が最大の焦点。
●議論継続ならいったん円安、関税交渉進展後、通貨安誘導回避の合意なら投機の円買い解消。
●2国間、多国間の通貨調整合意は困難、日本は為替と通商をわけて議論する方向で協議継続。
今週開催見通しの日米財務相会談では、米国の為替レートについての言及有無が最大の焦点
米国の首都ワシントンで4月23日、24日の両日(現地時間、以下同じ)、20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催されます。報道によると、加藤勝信財務大臣が会議出席のため米国を訪問し、24日の午後にベッセント米財務長官と会談を行う方向で最終調整が進められているとのことです。会談では為替分野などをめぐって協議が行われる見通しです。
そのため、今回の日米財務相会談では、ベッセント氏が為替レートについて言及するか否かが最大の焦点となります。市場では米国が日本に「円安是正」を求めることへの警戒が根強くみられ、ドル円相場はこのところドル安・円高地合いが続いています。
そこで以下、為替レートについて、想定され得る米国の対応を4つのケースにまとめ、それぞれに対する為替市場の反応について考えます。
議論継続ならいったん円安、関税交渉進展後、通貨安誘導回避の合意なら投機の円買い解消
1つめは、「為替については日米財務相の間で緊密な連携を図り、議論を継続する」などの発言にとどまるケースです。
日米関税交渉も始まったばかりの段階であることを踏まえると、具体的な為替レートへの言及には踏み込まず、今回はこのケースとなる可能性が高いように思われます。この場合、ドル円はいったんドル高・円安の反応が見込まれますが、米国の円安是正の要求に対する警戒は残るとみています。
2つめは、ある程度、日米関税交渉が進展した段階で、「公正な貿易取引を維持するため、為替レートがファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映することにコミット(約束)し、通貨の競争的切り下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない」などの表現で、日米の合意が示されるケースです。
内容的にそれほど強いものではないため、投機的なドル売り・円買いは、解消に向かう公算が大きいと考えます。
2国間、多国間の通貨調整合意は困難、日本は為替と通商を分けて議論する方向で協議継続
3つめは、日米でドル円レートをドル安・円高に誘導することで合意するケース、4つめは、1985年の「プラザ合意」のように、主要国が協調してドル高是正の調整を行うことで合意するケースです。
いずれも為替介入を伴うことから、大幅なドル安・円高の進行が予想されますが、為替市場の規模を踏まえると、3つめの2国間介入の持続性には疑問が残り、また、4つめの主要国による協調介入も、実現のハードルはかなり高いと思われます。
なお、トランプ米大統領は通貨政策でも米国民に強くアピールできる成果を求めると推測されることから、日米関税交渉が包括的な合意に達した時点で、2つめのような内容を、為替条項として合意文書に含めるよう要求する恐れがあります。
2つめのケースは、それほど懸念すべき内容ではないものの、日本は2019年に日米貿易協定を締結した時と同様(協定には為替条項は含まず)、為替は通商と分けて議論する方向で協議するとみています。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日米財務相会談の注目点【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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