(※写真はイメージです/PIXTA)

「ヘッジファンド」とは、株式市場が上昇局面のときでも下落局面のときでも様々な手法を駆使してプラスの収益を目指すファンドのことです。今回は、大手ヘッジファンドのトップの人物像に迫ります。※本連載は、渋澤健氏の著書『渋沢栄一 愛と勇気と資本主義』(日経ビジネス人文庫)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「本能的な競争心」がマーケットに駆り立てる

大手ヘッジファンドのトップは、グローバル・マーケットにおいてスーパースター的な扱いを受ける。そう、バスケットボールのマイケル・ジョーダンのように。

 

バスケットのファンがマイケル・ジョーダンの神業を見て目を丸くしながら、いつかジョーダンのようにプレーできればと夢を見るのと同じように、マーケットのプレイヤーはヘッジファンドのトップに対して同じようなあこがれを持っている。いつか自分もヘッジファンドを始めるのだ、と思いながら。

 

けれども、マイケル・ジョーダンだって、シュートミスをする。一時、プロ野球に移ろうとしたときは、いい成績が上がらず、結局バスケットの世界に戻ってきた。

 

ヘッジファンドのトップも同じである。スランプもあるし、株の帝王のタイガーがドル円に手を出して失敗したように、自分の得意分野ではないところに手を出すとケガをする。規模が大きいだけに失敗の影響は大きい。

 

また、マイケル・ジョーダンは大金持ちである。しかし、とても使いきれないほどの富を手に入れても、彼は熱心にプレーを続けた。バスケットを通じてスポーツ界で最も金持ちになったのに、ジョーダンはもっとも勝利に貪欲だった。

 

ということは、もはや彼にとって金儲けはプレーするための動機でなかった。抑えがたい闘争本能、勝負魂が、彼をゲームに駆り立てた。

 

では、市場のマイケル・ジョーダンたち、大手ヘッジファンドのトップにとって、仕事に対する動機づけはなんであろうか。

 

もちろん、最初は金儲けのためにヘッジファンドを設立したのであろう。だが、大手のトップになってしまうと、マイケル・ジョーダン同様、いやそれ以上に、一生で使いきれない富を手に入れてしまう。しかも、もしかするとまだ30代で。

 

普通の感覚の投資家やディーラーであれば、その時点で仕事のプレッシャーから解放されるため、たとえば南の島でも購入して、そこで楽しく余生を送ろうと考えるだろう。しかし、大手ヘッジファンドのトップまでに上りつめた人間は違う。

 

せっかく稼いだその富を毎日市場につぎ込んでリスクにさらす。「儲ける」ための仕事は決して楽ではない。24時間、プレッシャーが常にかかる。それでも、だ。彼らは、マーケットというフィールドでゲームに参加し続ける。

 

なぜだろう。ただただ、飽くことを知らない金の亡者なのだろうか。

 

筆者の知るかぎり、おそらく、そうではない。まさしく、ジョーダンと同じだ。自分が他のトップ選手と競り合い、ベスト・オブ・ザ・ベストを目指す__その人並みはずれた本能的な競争心、それが彼らを駆り立てている__私はそう思う。

 

渋澤 健

コモンズ投信株式会社会長

 

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渋沢栄一 愛と勇気と資本主義

渋沢栄一 愛と勇気と資本主義

渋澤 健

日本経済新聞出版

もし、渋沢栄一が現代に生きていたら、日本の持続的成長を促すファンドをつくっていただろう――。 大手ヘッジファンドを経てコモンズ投信を創業した渋沢家5代目が、自身のビジネス経験と渋沢家家訓を重ね合わせ、目指すべ…

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