本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

実質GDP成長率は前期比年率▲3.9%に第1次速報値▲5.1%から上方修正

 

設備投資は前期比▲1.2%に上方修正、公共投資は同▲0.5%に上方修正

 

民間在庫変動の前期比寄与度が第1次速報値+0.3%から+0.4%に上方修正

 

 

●21年1~3月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比▲1.0%、前期比年率▲3.9%となり、第1次速報値の前期比前期比▲1.3%、前期比年率▲5.1%から上方修正となった。法人企業統計を受けて設備投資が上方修正された。また、政府最終消費支出と公共投資の公的需要が上方修正された。

 

●実質GDP季節調整値は20年4~6月期500.2兆円、7~9月期526.7兆円、10~12月期541.5兆円のあと、21年1~3月期536.1兆円となった。差額を採ると、前期差は20年4~6月期▲44.0兆円、7~9月期+26.5兆円、10~12月期+14.8兆円、21年1~3月期▲5.4兆円である。7~9月期と10~12月期を合計した戻し分は+41.3兆円で20年4~6月期の下落分の94%戻したが、そこから低下し、21年1~3月期時点では81%戻しという水準になっている。

 

●1~3月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比▲1.3%、前期比年率▲5.1%となり、第1次速報値の前期比▲1.6%、前期比年率▲6.3%から上方修正となった。名目GDPの季節調整値は544.4兆円で直近のボトムだった20年4~6月期の510.1兆円と比較すると34.3兆円高い水準だが、コロナ禍前のピークだった19年7~9月期の562.8兆円と比べると18.4兆円低い水準である。

 

●1~3月期の個人消費・前期比は、第1次速報値の▲1.4%から前期比▲1.5%へと0.1ポイント下方修正となった。

 

●1~3月期の実質住宅投資は、第1次速報値の前期比+1.1%から前期比+1.2%へと0.1ポイント上方修正となった。

 

●1~3月期の実質設備投資・前期比は第1次速報値の▲1.4%から前期比▲1.2%へと0.2ポイント上方修正となった。

 

●1~3月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.4%と第1次速報値の+0.3%から0.1ポイント上方修正となった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度+0.3%で第1次速報値+0.3%と同じになった。流通品在庫は前期比寄与度▲0.1%で第1次速報値の▲0.2%から0.1ポイント上方修正となった。法人企業統計を使って推計された原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の+0.1%と同じ+0.1%だった。同じく第1次速報値は仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は+0.1%と同じ+0.1%だった。

 

●1~3月期実質政府最終消費支出は前期比▲1.1%で第1次速報値の▲1.8%から上方修正になった。また、1~3月期実質公共投資は第1次速報値の▲1.8%から▲0.5%に上方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は0.0%で第1次速報値の0.0%と変わらなかった。公的需要全体の前期比寄与度▲0.3%で第1次速報値▲0.4%から上方修正になった。

 

●1~3月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値の▲0.2%と同じ▲0.2%になった。実質輸出の前期比+2.2%で第1次速報値の+2.3%から0.1ポイント下方修正となったが、控除項目の実質輸入の前期比も+3.9%と第1次速報値の+4.0%から0.1ポイント下方修正となった。

 

●1~3月期のGDPデフレーターの前年同期比は+0.6%で第1次速報値の+0.6%と同じであった。国内需要デフレーターの前年同期比は▲0.2%で第1次速報値の▲0.2%と同じであった。

 

●1~3月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.3%であったが、第2次速報値では同▲0.2%へと上方修正になった。この内訳に関しては雰囲気しか教えてもらえないが、第1次速報値では4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次に大きなマイナス寄与は仕掛品在庫、そして製品在庫が続き、原材料在庫だけがプラス寄与ということだった。法人企業統計のデータが加わった第2次速報値でも4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次に大きなマイナス寄与は仕掛品在庫、そして製品在庫が続き、原材料在庫だけがプラス寄与ということだった。

 

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、4~6月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は+551億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は▲6,667億円である。

 

●「令和3年度の経済見通し」の21年度実質GDP成長率見通し・前年度比+4.0%を達成するには、21年度各四半期、前期比年率+3.4%(前期比+0.82%)が必要である。20年度から21年度へのゲタは+1.8%である。なお、21年度各四半期が前期比+0.5%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+3.1%になる。

 

 

●8月16日に公表される4~6月期の実質GDP第1次速報値を4月のデータから考察してみる。

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の4月分対1~3月平均比は▲0.8%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同▲0.4%の減少だ。商業販売額指数・小売業の4月分対1~3月平均比は▲2.8%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の4月分対1~3月平均比は+3.9%の増加である。乗用車販売台数の4月分対1~3月平均比は+4.1%の増加である。需要サイドのデータの方が、供給サイドのデータよりしっかりしている。

 

●家計調査と同時に発表される総務省の総消費動向指数は、個人消費の97%に当たる家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって求めたものだ。実質総消費動向指数4月分は前月比▲0.1%の微減にとどまり、4月分対1~3月平均比は+1.3%の増加になった。需要サイドのデータが底堅い動きをしているからだろう。緊急事態宣言発令中の5月分の落ち込みを考慮しても4~6月期の前期比が昨年の4~6月期のような大幅なマイナスになることは考えにくい。また、需要サイドのデータを使用しないで、財とサービスに関する各種の販売・供給統計から算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)をみると、4月分対1~3月平均比は+0.4%と、若干の増加になっている。総合的に考えると、4~6月期の個人消費は、前期比で2四半期連続の減少になっても大幅なマイナスになる可能性は小さいとみられる。

 

●設備投資の関連データである資本財出荷指数(除、輸送機械)の4月分対1~3月平均比は+21.3%の大幅な増加率になった。4月分の前月比が+15.2%だったことが大きい。一方、建設財出荷指数の4月分対1~3月平均比は+3.3%増加になった。また、資本財総供給指数(除、輸送機械)の4月分対1~3月平均比は+5.2%の増加で、建設財総供給指数の4月分対1~3月平均比は+4.2%の増加である。総合的に考えると、供給サイドから推計される4~6月期第1次速報値の実質設備投資は前期比増加に転じる可能性が大きいと考えられる。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の4月分対1~3月平均比は+3.6%の増加になった。控除項目の輸入は同+5.9%の増加になっている。4月のモノ分だけでみると、4~6月期の外需の前期比寄与度はマイナスになるが、サービスの動向や、5月分・6月分のモノの動向次第で前期比寄与度はプラス・マイナスどちらの可能性もある状況だろう。

 

●4~6月期実質GDP第1次速報値は、緊急事態宣言発令の影響で個人消費を中心にもたついた内容にはなろうが、一部で言われているように2四半期連続マイナス成長になるとは必ずしも言えない状況とみられ、今後の動向を注視していく必要があろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年1~3月期実質GDP(第2次速報値)について』を参照)。

 

(2021年6月8日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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