4月分機械受注(除船電民需)は前月比+0.6%と2ヵ月連続の増加
製造業・前月比+10.9%の増加だが、非製造業(除船電民需)・前月比▲11.0%の減少
3ヵ月移動平均3ヵ月連続減少等で、基調判断「持ち直しの動きに足踏みがみられる」継続
4~6月期の見通し前期比+2.5%は、5~6月の各月前月比が各々+2.6%で達成
●4月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は+0.6%と2ヵ月連続の増加になった。但し、3ヵ月移動平均は前月比▲1.6%で3ヵ月連続の減少になった。機械受注(除船電民需)の前年同月比は+6.5%で3ヵ月ぶりの増加になった。
●機械受注(除船電民需)の大型案件をみると、前回3月分では大型案件は運輸業・郵便業の鉄道車両の2件であったが、今回4月分では該当なしだった。
●4月分製造業の前月比は+10.9%と4ヵ月ぶりの増加だ。4月分の製造業では17業種中、10業種で増加し、減少は7業種だった。内燃機関や冷凍機械が増加した造船業、原子力原動機や電子計算機等が増加した非鉄金属などが増加に寄与した。
●4月分非製造業(除船電民需)の前月比は▲11.0%と2ヵ月ぶりの減少になった。火水力原動機1件の大型案件があった電力業は前月比+29.6%で2ヵ月連続の増加となった。4月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比▲1.1%と2ヵ月ぶりの減少になった。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。
●大型案件は、前回3月分は17件。内訳は民需が4件、機械受注(除船電民需)は運輸業・郵便業の鉄道車両の2件。電力業が火水力原動機2件だった。また、官公需が10件(防衛省が6件、その内訳は船舶1件、航空機4件、電子計算機等1件、また国家公務が航空機1件、地方公務がその他産業機械1件、その他官公需が電子計算機等2件)、外需が3件(航空機1件、火水力原動機2件)であった。今回4月分は2件と少なかった。内訳は民需が前述の電力業の1件、外需が1件(合成樹脂加工機械)であった。
●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は4月分前月比+8.4%と2ヵ月連続の増加となった。一方、前年同月比は+13.3%と2年ぶりの増加に転じた。
●大型案件が1件あった外需は、4月分の前月比が+46.2%と2ヵ月ぶりの増加である。前年同月比は+67.8%で、2ヵ月ぶりの増加になった。
●内閣府の基調判断の推移をみると、19年10月分から20年3月分まで半年にわたり「機械受注は、足踏みがみられる」という判断であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく出た4月分では「機械受注は、足元は弱含んでいる」という判断に下方修正され、5月分では判断据え置きになった。6月分では「機械受注は、減少している」という判断にさらに下方修正され、7月分では判断据え置きになった。8月分で「機械受注は、下げ止まりつつある」に上方修正され、9月分でも据え置きになった。10月分で「下げ止まっている」に上方修正となったあと、11月分で「持ち直しの動きがみられる」に上方修正、12月分では「持ち直している」に3ヵ月連続で上方修正となった。21年1月分では「持ち直している」で判断据え置きになった。2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、前回3月分に続き、今回4月分でも「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置かれた。機械受注(除船電民需)の3ヵ月移動平均が3ヵ月連続減少になったことなどを反映しているようだ。
●機械受注(除船電民需)の4~6月期・前期比実績は09年(平成21年)から昨年までの12年間でみると、上振れ4回、下振れ8回であり、下振れしやすい傾向がある四半期である。4~6月期の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率96.7%をかけたものである。4~6月期の前期比見通しの+2.5%を達成するためには、5月分・6月分の各月で、前月比+2.6%が必要である。また、各月の前月比が0.0%なら4~6月期の前期比は▲0.0%になる。
●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・DIの20~21年の動きをみる。20年1月の現状判断DIが52.8(回答数9人)と18年12月分の55.0以来の50超であった。当時の設備投資関連・現状判断DIからは底堅さが感じ取れるようになっていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で現状判断DIは4月10.0(同5人)へと急落した。4月を底にその後、緊急事態宣言解除もあり、多少の上下はあったものの11月は50.0(同13人)まで持ち直した。しかし、その後は新型コロナウイルス感染再拡大の中、12月は44.4(同9人)、21年1月は39.3(同7人)、2月は37.5(同14人)と低下したあと、3月は47.5(同10人)に戻り、4月は44.4(同9人)に、5月は45.0(同5人)に、なっている。5月では「客の設備投資意欲に変化はみられない。(東北・通信会社〔営業担当〕)」というコメントがあった。
●一方、設備投資関連・先行き判断DIは19年11月には51.8(同16人)と1月以来の50超に戻ったが、そこから下落し、20年4月は18.8(同8人)と弱含んだ。新型コロナウイルスの影響によるところが大きい。4月をボトムに持ち直し、一進一退状態もあったが、9月に45.5(同11人)まで戻した。その後、10月は41.1(同14人)、11月は35.0(同5人)、12月で45.8(同12人)、21年1月(同7人)64.3、2月(同9人)44.4、3月(同9人)55.6、4月(同8人)46.9、5月(同6人)37.5と推移してきた。5月では「新型コロナウイルス感染の収束がみえないなか、設備投資については慎重になっている企業が多い。また、直接商品に触れることができる展示会などが開けないなか、商品の訴求力を高めることが難しくなっている。(東北・コピーサービス業〔従業員〕)」というコメントがあった。
●日本工作機械工業会によると、5月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+83.2%と、3月分+18.2%、4月分+70.6%に続き、3ヵ月連続の増加になった。新型コロナウイルスの影響が出ていた前年の反動の影響が大きいが、生産設備需要が増加しつつある面もあるようだ。機械受注統計では4月分の民需からの工作機械受注は前年同月比+71.4%の増加であった。5月分の機械受注統計でもしっかりした数字になる可能性が大きいと予測する。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4月分「機械受注」のデータ』を参照)。
(2021年6月16日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト