(※写真はイメージです/PIXTA)

いざというときに相続で困らないためには、相続の基本を知り、早めに準備をすることが大切です。本記事では、相続する不動産の「名義人」と「所有者」が異なる場合に相続トラブルになりやすい理由と解決策を見ていきます。※本連載は、平野克典氏と金子嘉徳氏の共著『相続のお守り』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

名義人が親ではない場合は、早めに「名義変更」をする

相続してそのまま売る場合でも、一旦は登記しなければ売却できません。親の持つ不動産について、名義人が親になっているかを早めに確認しておきましょう。そして、親の名義になっていなければ、親が元気なうちに、親へと名義を変更する相続登記をすませてもらっておきましょう。

 

また、相続する不動産が戸建てなら、隣の土地との敷地の境目「境界」が確定しているかどうかも確認すべきです。もし確定していないと、いざ土地を売りたいときに売買が成立しないケースも多いので、この手続きも早めにすませられると安心です。親が隣地を所有する人と関わりがあるなら、子より親が手続きする方が隣地所有者の協力を得やすく、スムーズに進む可能性が高いはずです。

 

それに、もし親と隣地所有者との間で境界線について何か取り決めがされていたら、親が亡くなってからでは「取り決めなんて知らない」と言い張られてしまうかもしれません。そうしたトラブルを避ける意味もあります。

「相続登記」をしていれば、遺言にも対抗できる

【事例】
Cさんは夫から賃貸用アパートを相続しました。遺言書にも「不動産は妻に相続させる」としっかり指定があります。しかし、息子がそれを無視して、不動産の名義を自分に変えた上で、第三者に売却してしまいました。取り戻すことはできるのでしょうか。

 

2018年7月の相続法改正により、遺産分割の場合はもちろん、遺言による場合でも、相続登記が第三者への対抗要件になりました。

 

対抗要件とは、当事者間の権利関係を第三者に対して法的に主張できる効力で、登記によりこれが生じるということです。これにより、法定相続分を超える部分も含めて相続したと第三者に対抗できることになります。

 

つまり、相続登記をしないままでいると、法定相続分を超える持分については第三者に権利の主張ができません。結果的に、遺言や遺産分割により取得していたはずの不動産を失う恐れがあります。

 

この例の場合、息子が名義変更する前に妻が登記をしていたのであれば、遺言通り不動産を取り戻すことができます。しかし、妻の登記よりも先に息子が自分名義に登記をして、その上で第三者に売却したとします。その場合、妻は自分が遺言通りに不動産を相続したとの主張ができないため、法定相続分を超える持分については取り戻すことができません。

 

こうした点からも、相続時には登記を忘れないようにしましょう。

 

 

平野克典

司法書士平野克典事務所 所長・司法書士

 

金子嘉徳

株式会社フロンティアグループ 代表取締役

 

 

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平野克典、金子嘉徳

総合法令出版

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