都会の一人っ子長男が「田舎の父の家」をもらって起きた悲惨事態【司法書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

親から相続した不動産が老朽化していて売却できずに「空き家」のままにしておくと、場合によっては固定資産税は最大6倍になるといいます。近年、社会問題にもなっている「空き家問題」の解決策について見ていきます。※本連載は、平野克典氏と金子嘉徳氏の共著『相続のお守り』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続した建物がある土地を「更地」にすると税金が6倍

【事例】
Fさんは一人息子。田舎に住む一人暮らしの父親がなくなり、相続が発生しました。財産は現金1000万円と実家。Fさんは都会に自宅を持っており、実家に住むことはこれからもなさそうですが、現金と合わせて相続しました。地方にある家なので大した価値にはならないだろうけれど、売れば何かしらの足しにはなるだろうと考えていたのです。

しかし、なかなか買い手がつきません。賃貸に回そうかとも考えましたが、すでに老朽化していて現実的ではありません。このままでは、毎年固定資産税を払い続けなければならず、また空き家のまま放置しておくのも心配です。

こうした事例は珍しくありません。相続した不動産を売却するとき、それなりの金額になればいいですが、そうとは限りません。二束三文にしかならず、売却で発生する税金や登記費用などの実費を差し引けば赤字になることもあります。古くて立地が悪いなど、なかなか買い手がつかない場合もあります。

そうかといって自宅はほかにあり、賃貸に回すことも現実的ではない。そうした場合にはどうすればいいでしょうか。

 

このような事例は、珍しくはありません。選択肢としては、空き家で所有しておくか更地にするかの二通りです。ここに大きく関わってくるのが税金面です。建物のある土地は、「住宅用地特例」により、固定資産税は更地に比べて最大6分の1に軽減されます。

 

建物のある土地を相続した場合、更地にすれば税金が6倍になるということです(図1)。

 

【図1】住宅用地特例による軽減措置

 

その上、建物の解体費もかかります。そのため、相続した古い家が空き家のまま残るケースは非常に多く見られます。

 

近年では街に空き家が増えてきたことで、空き家の倒壊や犬・猫の侵入など衛生上の被害、街の景観を損ねるなど、全国的に問題が起きるようになりました。

 

そこで、国は2015年に「空き家対策特別措置法」を施行しました。これは、適切に管理されず、倒壊の恐れや衛生上の問題などがある空き家を「特定空き家」に認定し、修繕、撤去の指導や勧告を行う制度です。

 

特定空き家に認定されると、住宅用地の軽減措置特例の対象外になります。つまり、建物が建っていても、固定資産税は最大6倍になってしまうということです。

 

いまのところ、特定空き家の認定件数は多くありません。そうはいっても、可能性がまったくないわけでもありません。何より、空き家の放置は他人に迷惑をかけることもあります。

 

一旦更地にして土地を売る、駐車場などに活用できる、あるいは更地のままでも所有し続けることができるくらい経済的余裕がある、といったことでなければ、次の相続放棄を考えるべきかもしれません。

 

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    司法書士平野克典事務所
    所長・司法書士

    1974年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。米国ミズーリ大学コロンビア校留学。
    トヨタ自動車株式会社、埼玉県庁を経て、司法書士平野克典事務所を開業。
    県庁在職中は、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)に出向し、主に海外企業誘致に従事する。
    現在、東京司法書士会三多摩支会家事事件対策部次長。

    著者紹介

    株式会社フロンティアグループ
    代表取締役

    1974年生まれ。東京理科大学工学部中退。米国ミズーリ大学コロンビア校卒業。同大在学中に北京大学へ交換留学。
    帰国後、日系商社及び外資系企業勤務を経て、当時東証一部上場の金融グループ企業に転職し、在職中32歳の最年少で取締役に就任。
    在職中、中央大学大学院国際会計研究科(MBAコース)を首席卒業。
    2008年、株式会社フロンティアグループを設立し、代表取締役に就任。
    不動産事業を中心に、M&A、人材紹介など多様なビジネスを展開。
    株式会社フロンティアグループでは定年退職制度を廃止して、生涯現役社会づくりを推進中。

    著者紹介

    連載いざというときに困らない「相続対策の基礎知識」

    相続のお守り

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    平野克典、金子嘉徳

    総合法令出版

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