各校の過去問10年分を表にして分析すると
センター試験は一定の周期で同じような問題が出題されるので、苦手分野の過去問に10年分取り組むと、次年度に問われることがわかるようになり、効果的です。
また、時間制限があるセンター試験には、やはり「慣れ」が必要です。10月には各予備校がその年のセンター試験予想問題集を出版しますから、それをやり込むことが有効でしょう。
日本大学医学部医学科に進学した教え子は、問題集についている模試を1日1回取り組んだと言います。ある日はK塾の数学ⅠA、翌日は数学ⅡB、さらに次の日はS予備校の数学ⅠA、数学ⅡB……というように、数学ⅠAだけで16回をこなしました。すると、普通のマーク模試(マークシート式模擬試験)で90点を切ることはなくなったそうです。
もちろん、本番でも安定した結果を残すことができました。まちがえた問題はその分野に穴があるということなので、自分で基礎の穴を埋めていきます。
日本大学医学部に進学した教え子の勉強法は、いわば常套的な手法ですが的を射ています。過去問を繰り返し学ぶ、不正解が多い分野を粘り強く治療し改善するというのは、得点を向上させるうえで、正しい態度です。
大学入学共通テストは、今年が第1回目ですからサンプルはそれほど多くはありません。それでも、1月中旬と1月末に2回実施されていますから、まずこの2回分を全問解き、マスターするとともに傾向を分析することが何よりも重要です。
さらに大手予備校や赤本の教学社から出版されている予想問題集などをやりこめば勘はつかめます。その際、学習の態度として重要なのは、これまでのセンター試験との違いに留意するということです。数学で言えば、数式の世界に入る前に、与えられた問題文の整理と理解に時間が取られますので、この時間を短縮する技術を学ぶことです。
また、英語は、従来の英文法や発音アクセントなどを含む多様な内容から、完全に長文読解重視型に変貌していますから、これら複数の長文をどう短時間に処理するかの戦略の問題になってきています。方法論はいくつか考えられますが、その手法については、今後の連載で記します。
過去問を精緻に分析すれば、出題者のクセが分かる
毎年、受験が終わると、予備校で教えている学生たちから「先生、講義で予想されていた問題が出題されました!」という報告が寄せられます。なかには、「なぜ、こんなにも問題が的中するのですか」と訝しく思う受験生もいるようです。
しかし、これは魔法でも違法でもありません(笑)。
私は国公立、私立、各校の過去問を最低でも10年分ずつ用意して、どの分野から出題されているかを表にして分析します。表にすると出題傾向が一目瞭然です。その傾向を分析して、翌年はどの分野から出題されるか、を予想していくわけです。
このようにして、各校の過去問を徹底的に分析しているから、予想が当たるのであって、ごくごく普通のことなのです。
私立医学部が特にそうですが、各校がそれぞれ特色ある出題をするのが医学部入試です。逆に言えば、各校の試験の出題傾向がまったく異なるからこそ、むしろ予想ができるのです。
種明かしをしてしまうと何でもないことですが、受験生は意外にこのような地道な作業が苦手です。しかし、少なくとも志望校については、過去問を分析することをおすすめします。自分で分析できない人は、高校や予備校の先生に分析してもらいましょう。
小林 公夫
作家 医事法学者