年収400万円の26歳男性が「家賃滞納」…「怖くなっちゃって。」どうしようもならない状況に、83歳の高齢大家は司法書士へ助けを求めた

年収400万円の26歳男性が「家賃滞納」…「怖くなっちゃって。」どうしようもならない状況に、83歳の高齢大家は司法書士へ助けを求めた

コロナ感染拡大の影響によって雇止めにあい、家賃が払えなくなってしまった事例が相次いでいます。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、実際のトラブル事例を紹介していきます。

「仕事決まったんです。ただ相談したいことがあって」

もしかしたらこの物件がなくなるかもしれない、私のその言葉が「追い出される」よりも西山くんの心に響いたようです。

 

「僕まだここに住みたいです。おばあちゃんといると田舎にいるみたいで、落ち着くんです。ここに住み続けたい。だから急いで仕事探します」

 

佐知子さんが「良い子」と言っていたように、西山くんは決して噓をついたりするずるいタイプには見えません。とりあえずここから連絡をとりあって、何か変化があればすぐに双方が伝える約束をして、この日は別れました。

 

佐知子さんに報告すると、「あぁ、やっぱりね」とつぶやきました。いつも元気に挨拶する西山くんを暫く見かけなくなったので、おかしいと思っていたようです。

 

家賃滞納は、佐知子さんにとっては大きな収入減です。それでも年金があるため、生活ができないほどではありません。西山くんの状況が分かって、佐知子さんも思うところがあるようでした。

 

佐知子さんから訴訟手続きをとるかどうか、少し考えたいと言われ、正式に訴訟手続きの委任を受けた訳ではないのもあり、しばらく日常の業務に追われて、この件は頭から完全に抜け落ちていました。

 

物件に行ってから、ひと月くらい経っていたでしょうか。お恥ずかしいことですが、この件のことを、私は西山くんからの直接の電話で思い出したのです。

 

「太田垣さん、仕事決まったんです。ただ相談したいことがあって」

 

西山くんの声は、ひとつ山を越えた感がありましたが、まだ何かありそうです。

 

「仕事は決まったんですけど、最初の3カ月は試用期間で給料も少ないんです。毎月の家賃は払えますが、溜まっている滞納分の支払いが月に2万円くらいしか難しくて。収入が増えるまで、支払いに2年ほどかかる計算になってしまうんです。でもどうしてもここに住み続けたくて。それでという訳じゃないんですが……」

 

西山くんの提案は、こういうことでした。佐知子さんは、現在83歳。電球を替えるだけでも一苦労です。そんな日常生活の細々としたことを、お詫びに西山くんが買って出たいというのです。それで滞納分の支払いが長期になるけど、許してほしいということでした。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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