手付金300万円で掴んだ出店チャンスも「損切り」
そして筆者は重要な決断を迫られていた。
コロナ禍の半年ほど前のことである。
2019年9月、手付金として300万円を支払い、勇ましくツイッターに書き込んだ。
『遂に神物件をゲットしました!5000万円勝負!』
2021年にオープン予定の大阪駅前新築ビル物件の本契約の時期が3月半ばに迫っていた。
大阪駅から徒歩30秒、梅田ESTから徒歩2秒。新築で坪単価3万5000円はまたとない出物だ。このような好条件の物件に出合えることはそうそうない。これぞCIELの名を知らしめる千載一遇のチャンス。この一等地中の一等地に、みんなが驚くようなかっこいい美容室をつくる! と、半年前には夢が膨らんでいた。
しかし、ここに美容室を出すためには投資額も高くつく。物件の保証金が約1500万円、内装に凝るためには1800万円、美容器具で500万円。その他諸々まさに5000万円の投資となる。毎月の売り上げを1000万円は狙わないと旨味はない。
手付金を支払ったあとも、本当にいまこんな大勝負に出ていいのか。もっと地方や他県のほうが利益は狙いやすいのではないか、と躊躇する自分もいたのだが、このチャンスを生かしたいという欲も大きかった。
しかし、この先が見えないコロナ禍だ。
「ここであきらめたらこんな好立地に店を出すチャンスはないかも。水面下で動いて300万円払って、運よく手に入れた飛躍のチャンスだったのに……」
勝負したい、未練がある自分もいるけれど、いまの状況を冷静に判断しなければならない。
筆者は決断した。
「撤退しよう」
300万円を損切りして諦める。いま、コロナで先が見えない状況で、守らなければならないものは全国の社員、26の店舗。いまは勝負に打って出る時期じゃない。
この決断を発表したら、300万円をさっさと諦める潔さに驚いた人が多かった。しかし筆者にとっては、これは株の「損切り」と同じだ。契約してさらに投資すると、株でいうとナンピンになり、引くに引けない負けパターンに引きずりこまれる。コロナで流れが変わったのだ。
それにこのコロナはチャンスかもしれない。もしこのコロナの収束に時間がかかれば、空き物件が増えてくるだろう。どこもかしこも高い一等地の家賃もいまがピークなのかもしれない。そうなれば中心街の物件も手に入れやすくなる。いま、時代は動いている。これも株と同じだ。レバレッジをかける、損切る、そのタイミングを見極めるために、情報をもっと集めて成功の確率を高める。
3月半ば。ヨーロッパでは感染が広がり、飲食店、美容室などに休業要請が出た。ロックダウン、これが日本にもやってくるかもしれない。でも、夏になれば感染者は減るだろうし、秋までにはワクチンも開発されるかも。それならば出店計画は秋以降に延期しよう。これからやってくるであろう、売上減に耐える体力を残しておく。問題はこの感染がどこまで広がるか、いつまで続くかだ。
山下 拓馬
OXY株式会社 代表取締役
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