コロナ感染拡大の影響により在宅時間が増えるなか、ゴミが捨てられなくなってしまう若者が問題になっています。※本記事では、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏の書籍『不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方』(ポプラ社)から一部を抜粋・編集し、事例を紹介していきます。

業者に清掃してもらった後の女の子はどうなった?

次の仕事がすぐに見つかってくれればいいのですが、今の求人倍率からすると、なかなか期待できません。私は住居確保給付金のことを伝えてみました。彼女はそのような補助の情報をまったく知らなかったようです。残念なことに必要な人に、必要な情報は届かないものだ……。そう感じました。

 

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住居確保給付金

離職や廃業、休業等で給与などを得る機会が減った人に対して、最大9カ月自治体から家主に家賃相当額(上限あり)を支払う制度(令和2年度中に新規申請して受給を開始した人は最長12カ月まで延長可)。

 

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この制度はコロナに限らず、支払いが厳しくなった人が家を失ってしまうと求職活動もしにくくなるので、その救済のためにあります。

 

ただ一般の方々がどれだけ知っているかは疑問です。貧困で苦しんだり病気になってしまったりするのは、全部その人の努力不足が原因だという考え方の自己責任論では「自分で情報を取りにいかない」者を責めます。

 

でも追い詰められた状況で、どれだけの人が前を向けるでしょうか。今日生きることで精一杯で、さまざまな情報を検索する余裕などない人だってたくさんいます。

 

コロナ禍での10万円の特別定額給付金の支給ですら、行政がパンクしました。その混乱した状態で、誰が情報を発信してくれるというのでしょうか。「こんな制度があるよ」、こういう時こそ、自主管理の家主や管理会社が入居者に情報を提供してあげて欲しい、心からそう思います。

 

そのほんのちょっとのお節介で、どれだけの人が救われるでしょうか。そして同時に、こうして心が弱った人は情報を得られずに、どんどん社会から置き去りにされてしまう怖さも感じたのです。こうやって日本は二極化が進んでいっているのかもしれません。

 

プロの業者に部屋を片付けてもらい、すっきりしたところで、もう一度私は彼女と家主と3人で会う機会を持ちました。

 

「部屋がきれいになったら、ちゃんと片付けようって思えるようになりました」

 

女の子の表情は、少し明るくなっています。住居確保給付金のおかげで、ひと月のいちばん大きな固定支出が賄われるので、気持ちに余裕も持てるようになったと言います。早く職を見つけて、仕事をしたい、そう微笑む女の子の目には力があります。これなら早い段階で職も見つけられそうです。

 

「自分では気づいていなかったけど、鬱っぽかったのかな。家主さんに声をかけてもらわなければ、どんどん悪くなっていったと思います。自分ではどうしようもできなかったから。だからとても感謝しています。給付金がもらえている間に、もうどんな仕事でもいいです。仕事を見つけて、これからはお部屋もきれいに使います」

 

彼女の部屋を後にして、中山さんと私は本当に胸をなで下ろしました。

 

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不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

不動産大異変:「在宅時代」の住まいと生き方

太田垣 章子

ポプラ社

著者は、20年にわたり2500件以上の不動産トラブルを扱ってきた異色の司法書士。 業界紙・業界誌などでの連載や「家賃滞納という貧困」「老後に住める家がない!」などの著作を通じて(ともにポプラ新書)、業界では知らない人…

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