③既存入居者対応業務
既存入居者対応業務は、大きく三つに分かれます。
家賃集金業務(督促、追い出し含む)
一つめは、最も大切な家賃集金業務です。必ずしも全員がきちんと家賃を払ってくれる時代ではなくなりました。オーナーさんにとっては、いかにもれなく家賃を回収するかというのが収益に直結します。
そのために、保証会社への加入や自動引き落としの設定といった仕組み作りは大切ですし、滞納に対する督促の方法、さらには悪質入居者の追い出しなどの対応も想定しておきたいものです。
入居者からの要望への対応(クレーム、家賃交渉など)
二つめは、入居者からの要望への対応で、大きく二つに分かれます。
まず、クレーム対応です。
入居者からは、「水が漏れた」「水(お湯)が出ない」「隣の音がうるさい」など様々なクレームがありますが、ポイントはすぐに対応することです。これが遅れると「対応が遅い」ということで二次クレームに発展してしまいますし、最悪の場合、退去につながってしまいます。当社の管理事例で言えば、水漏れ等の建物に関するクレーム対応は専門会社と提携しています。当社の専用回線を引くことで、24時間365日、即座に対応できる体制を整えています。
具体的には1時間以内に現場に急行し、その場で水漏れなどの処置ができる仕組みを構築しています。すぐに現場に行き、その場で解決してしまうというのが大きなポイントであり、この仕組みを導入してから退去数が劇的に減りました。これは、入居者が退去する理由として、管理会社の対応の遅さ、すなわち管理への不満があったことを意味しています。
空室が出た場合、その空室をいかに埋めるかが重要なわけですが、アパート経営においては、そもそもどうやって空室の発生を抑えるか(退去を少なくするか)という予防策が、「空室を埋める」という対応策と同様に大切です。
なぜでしょうか。それは、繰り返し述べていますが、これからはアパート供給過剰の時代だからです。家賃は基本的に下落していきますので、過去に入った(現在入居している)入居者は、現在もしくはこれから入る入居者に比べ、家賃水準が高いのが一般的です。
ということは、その入居者の方にはできるだけ長く住んでいただくことが、経営的な観点では最も効率がよいということになるわけです。昔のように礼金が多く取れる時代ではなくなっている一方、入居者を募集するに当たっての広告料は増加する傾向にあります。また、退去後の改修工事も、ほとんどがオーナーさんの負担になっている状況ですから、退去が出るたびに工事費用もかかってしまいます。つまりオーナーさんにとっては、基本的には入居者が退去すると多額のコストがかかり、さらには家賃も下がってしまい収益を圧迫してしまうということです。
次に、契約関係に関する入居者からの要望です。特に最近多いのが家賃を下げてくれというものですが、この要望に対しては、個別的な要素を勘案し、対応することが肝要です。建物の不具合等に対するクレームは無条件に即座に対応しなければいけないのですが、要望については利益を最大化するためにはという視点から、シビアに「要望を受け入れる、受け入れない」の判断をすることが重要です。
入居者への提案業務
既存入居者対応業務の三つめは、入居者への提案業務です。
先述したように、いかに入居者の退去を減らし、長期入居につなげるかが重要という視点に立てば、受け身の対応だけではなく、オーナー側から入居者へ様々な提案をしていくことも求められます。入居者へ前向きな提案を行うことは、今後非常に重要な業務となっていくでしょう。
当社の管理事例で言えば、現在の入居者がずっと気持ちよく住み続けてくれるように、例えば長期で入居している人の部屋のキッチンやエアコンを無料で交換したり、お風呂に追い焚き機能を付けたりといったサービスを考案し、提案することで、既存入居者の流失を防いでいます。ただし、コストを無制限にかければよいというわけではありませんので、あくまでも費用対効果を勘案して行うことが大切です。
大谷 義武
武蔵コーポレーション株式会社 代表取締役
太田 大作
武蔵コーポレーション株式会社 専務取締役
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