ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。
仏壇のお線香、ろうそくなども全て撤去
平日ひとりでいるのに一番心配なのは、火事だ。以前お弁当容器を火にかけた事件は忘れられない。朝、キッチンに入ってお湯を沸かしていたことがある。このときはちゃんとヤカンを使っていたが、毎回使う保証はない。それから、毎日元栓を閉めることが習慣になった。昼間にリビングに入ってきて電話をとることもあった。
昼間はセールス電話が多いと思うが後日、「前に出られたお母様が、私にはわかりません、と言われていたので改めてかけさせていただきました」という電話が入った。この対応はナイスだが、いつもこの対応ができる保証はない。火事対策でいうと、仏壇のお線香、ろうそく、マッチなども全て他の部屋に移動させた。毎日、ご先祖様にお線香をあげていた母だが、今はもうこの日課を忘れているようだ。
かなり長い間続いたのが、施設からティッシュペーパーをポケットに入れて持ち帰ること。いつも洗濯の際は気にかけていたのだが、うっかり何回も入れたまま洗濯してしまったことがある。洗濯を干す時間がいつもの倍以上かかり、自分の確認ミスなのにティッシュもほしがる母も疎ましく思うこともあった。
渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表
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「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると
「在宅介護エキスパート協会」代表
1964 年、静岡市生まれ、川崎市育ち。NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。
2人の子どもに恵まれるも、両親が同時期に脳血管障害、認知症、骨折、肺炎で入退院を繰り返す。長年にわたり仕事、子育て、介護(遠距離介護4年・在宅介護8年)の「トリプルワーク」を経験。仕事をしながらの育児、介護にストレスが極限にまで達し、介護疲れを起こす。書籍や情報サイトなどを頼るも、「介護の常識」は、仕事や育児との両立をしている人にとっては、全てこなすことなど到底できない理想論であることを痛感する。その後、「自分でもできる介護」を自力で確立することを決意。アイデア発想講師としての知識を生かし、それまでの「完璧な介護」から「自滅せず親も家族も幸せになる介護」へと発想の視点を変え、現代人のための介護思考法を独自に研究する。
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