なぜポケットにティッシュ?…洗濯でイラつく母の長年の習慣

ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

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年老いても人の役に立ちたいもの

同居介護 母…要介護1

 

父が亡くなり、そのまま母と同居するようになった最初の頃、リビングにある書類や、キッチン用品を自分の部屋に持っていき、棚や仏壇や、洋服入れに隠すという事件が頻繁に起こった。紛失物は必ずといって良いほど母の部屋から見つかった。欲が出てくるのか、本当に自分のものと思っているのかは不明だ。

 

また、あるときは、リビングにいる犬にお菓子やパンを全部あげてしまうという事件もあった。高かったパンも全て犬の胃袋だ。犬は嬉しいかもしれないが身体には決して良くはない。また、あるときは息子がシャツに大便がついていて学校で洗ったと怒りながら言う。一緒に母のものと洗わないでくれと。いつも洗濯機に入れる前に一通り確認しているので、その時点で大便がついたまま洗濯機に入れることはまずない。

 

息子の勘違いかと思ったが、ある日、リビングに干してある洗濯物に大便がついていることを自分でも確認した。何時、誰が? でも母以外には考えられない。母が自分の大便をさわった手でこすりつけたのか……結局、どうしてついていたのかはわからなかった。きっと息子の話も真実だろう。後にも先に、この洗濯物大便事件は2回だった。真剣にリビングに鍵をつけることを考えた。

 

半年間、私が仕事の平日、母はひとり留守番をしていた。昔から洗濯が好きで1日何回も洗濯機をまわしては、しわもなく干すことが自慢だった。ワイシャツなどアイロン不要なくらい叩いて伸ばして干していた。もちろん畳むのも大好き。待っている1日というのは長い。

 

何か集中できる仕事をさせたい。そこで閃いたのは、朝、故意に洗濯済みの畳んである洋服を部屋一面にばらまくことだ。それを全て畳むのには結構な時間がかかる。何でも良い、本人が得意なもの、好きなものはないだろうか考えてみよう。本人が集中できることを任せてみると良い。わが家は飽きもせず、毎回この方法を実行した。

 

出かけるとき、「洗濯物、畳んでおいてね、助かるから」と声をかけていった。母もわかったと喜んでいた。高齢者施設でも、タオルやおしぼりを畳んだり巻いたりする仕事を利用者が率先して取り合っている。みんな、仕事が大好きのようだ。人間って人の役に立ちたいものなのだ。

 

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「在宅介護エキスパート協会」代表

1964 年、静岡市生まれ、川崎市育ち。NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。
2人の子どもに恵まれるも、両親が同時期に脳血管障害、認知症、骨折、肺炎で入退院を繰り返す。長年にわたり仕事、子育て、介護(遠距離介護4年・在宅介護8年)の「トリプルワーク」を経験。仕事をしながらの育児、介護にストレスが極限にまで達し、介護疲れを起こす。書籍や情報サイトなどを頼るも、「介護の常識」は、仕事や育児との両立をしている人にとっては、全てこなすことなど到底できない理想論であることを痛感する。その後、「自分でもできる介護」を自力で確立することを決意。アイデア発想講師としての知識を生かし、それまでの「完璧な介護」から「自滅せず親も家族も幸せになる介護」へと発想の視点を変え、現代人のための介護思考法を独自に研究する。

著者紹介

連載親の入院、介護ですぐやること、考えること、お金のこと

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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