多くの人にとって住宅購入は人生の一大イベントです。しかし、高額なローンを組んで購入したマイホームが、万一欠陥住宅だったとしたら…。これまで数多くの「悩める欠陥住宅オーナー」を助けてきた、特定非営利活動法人建築Gメンの会理事長で一級建築士の大川照夫氏が、住宅購入のトラブル回避に不可欠なチェックポイントについて解説します。

「見積書・設計図書・契約約款」のチェックは焦らずに

Q7見積書に内訳明細がなく、「木工事一式〇〇円」「給排水衛生設備工事一式〇〇円」となっていますが大丈夫でしょうか?

 

A7内訳明細なしで工事金額が決まるはずがありません。このままで契約してしまったら、自分の意図に反する安い材料を使用されても、あとからは何も言えません。

 

Q8設計図には確認申請添付図面しかないのですが大丈夫でしょうか?

 

A8確認申請添付図面では家は建ちません。そのほかに、各階伏図(基礎伏図等)、構造図、矩計図等多くの図面が必要です。また、仕上表、外部仕様書、等の仕様書も必要です。設計図書一式がなければ正確な見積金額は出ません。

 

設計図書がないのは、のちのトラブルの元です。なぜなら、図面がなければ何を造るかという約束ごとがないわけですから、あとで「打合せと違う」と言っても、図面に明記されていないと、「そんなことを言った覚えはない」と言われれば、水掛け論になってしまいます。

 

Q9設計図書が一式揃っていないのですが、工事監理に支障がありますか?

 

A9工事請負契約とは、業者が設計図書通りの建物を造って引き渡し、建主がそれに対してお金を支払うことを約束した契約です。工事監理は「工事が設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」ですから、設計図書が揃っていなければ、その部分は確認のしようがありません。設計図書がなければ「工事監理をしない(させない)」と言っているようなものです。

 

設計図書には下表のものがあります。注文住宅の場合、これらの設計図書一式をきちんとそろえるには、実施設計が必要となります。実施設計はサービスでできるようなものではありません。企業によっては契約以前に実費を取って実施設計するところもあり、むしろこちらが本来の姿といえるでしょう。

 

建売住宅やマンション購入時にも、設計図書にはもちろん目を通す必要があります。構造や性能について、自分で調べても分からないときには専門家に頼んでみてもらいましょう。

 

設計図書の種類と内容(木造住宅)

 

Q10業者から提示された契約約款で契約して大丈夫?

 

A10契約約款とは建主、施工者、設計者、工事監理者の工事に関する約束事を定めたもので、契約書とセットになっています。契約約款は本来、両者で協議して作成するものですが、大抵は業者が用意します。しかし、業者が用意する契約約款は、内容が業者に有利に欠かれていることもあり、必ずチェックが必要です。建主に不利になっている項目は書き改めなければなりません。

 

契約約款のチェックポイントは次のとおりです。

 

◆設計図書や仕様書どおりでないときの改造義務

発注者が請負会社にやり直しを請求でき、請負会社がそれに従うことになっているか。

 

◆工事の変更・中止

発注者が必要な時、工事内容を変更したりあるいは一時中止や打ち切りができるようになっているか。

 

◆損害の負担

完成までに建築中の家や材料に損害が生じた時、請負会社が負担するようになっているか。

 

◆瑕疵担保

完成後、施工の欠陥によって瑕疵があるとき発注者が請負会社に補修を求めることができるか。

 

◆履行延滞違約金

工事が契約期間より延びたとき、請負会社に違約金を請求できるか。またその金額が書いてあるか(ちなみに旧住宅金融公庫作成の約款では遅滞日数1日につき請負代金の1000分の1以内となっています)

 

以上のことから、契約前に契約書、設計図書をチェックすることは非常に重要であり、今後のトラブルを防ぐことになります。しかし、建築は専門性が非常に強いため、建主がこれらをチェックするには限度があります。

 

よって、建主に代わって、第三者の専門家などに、この契約書、設計図書で契約してよいかどうかをチェックしてもらう必要があります。

 

 

大川 照夫

一級建築士

特定非営利活動法人建築Gメンの会 理事長

 

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本記事は、「欠陥住宅問題に取り組む第三者検査NPO - 建築Gメンの会」のウェブサイト(https://www.kenchiku-gmen.or.jp/)から転載・再編集したものです。

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