多くの人にとって住宅購入は人生の一大イベントです。しかし、高額なローンを組んで購入したマイホームが、万一欠陥住宅だったとしたら…。これまで数多くの「悩める欠陥住宅オーナー」を助けてきた、特定非営利活動法人建築Gメンの会理事長で一級建築士の大川照夫氏が、住宅購入のトラブル回避に不可欠なチェックポイントについて解説します。

契約書は「瑕疵担保責任の期限(=保証期間)」を見る

Q4契約書の注意点を教えて下さい。

 

A4契約書は印鑑を押す前にもらって、事前に内容をきちんと確認しましょう。契約書で大事なのは、添付されている図面・仕様書・見積書です。契約書にきちんとした図面・仕様書・見積書が添付(一体となっている)されていない場合は、契約を止めましょう。

 

注文者と業者は対等な契約当事者なので、注文者側の要望は遠慮せずに業者にきちんと伝え、納得いく契約内容となっていることを確認してから契約を結ぶことが大切です。契約書の本文は、ごく一般的には短い方が建築主に有利なことが多いので、文字の多い契約書はじっくり読んでください。

 

注意する点は、瑕疵担保責任の期限(=保証期間)です。これは住宅の品質確保の促進等に関する法律で、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分は瑕疵担保責任が10年となりました。しかしそれ以外の部分は、契約書では引渡から1年や2年になっている例が多いようです。会社によって保証期間に違いがありますので、長いほうを選択するのが賢い業者選びです。

 

そのほか、注意する点は、代金の支払時期、引渡時期、引渡が遅れた場合の補償、紛争の解決方法でしょう。

 

 ●注文住宅の場合 

 

注文住宅を建てる場合、あなたはマイホームを見ないで一生に一度という大きな買い物をすることになります。そのため、この契約は相当の注意を払う必要があります。「書類による取り決めがすべて」ということをよく頭にたたきこんで、隅から隅までじっくり見て、納得してから契約するようにしたいものです。書類の内容は、弁護士・建築士などの第三者の専門家に見てもらいましょう。

 

注文住宅を契約する場合、次の5つの書類をハウスメーカー・業者にそろえてもらって下さい。

 

◆工事請負契約書

引渡し時期や請負代金、支払方法などの重要事項を記載。契約内容が明確に定められているか確認すること。建設業法19条では、契約書面に工事完成の時期、遅延損害金などの一定の事項を記載することが義務付けられています。

 

◆契約約款

契約書と一対になっている契約の詳細を網羅。建設会社に一方的に有利な約款内容となっていないか注意すること。

 

◆設計図書(設計図・仕上げ表・仕様書)

平面図・立面図から構造の詳細図まで各種の図面と仕上げ材料の一覧表。図示できない事項は仕様書に記載。

 

◆見積書(工事費用内訳明細書)

材料の種類と単価、数量、各種工事代金を記したもの。その合計が請負代金

 

◆工程表

工事のスケジュール表

 

 ●建売住宅・マンション・中古住宅の場合 

 

建売住宅やマンション、中古住宅などすでに建っている住宅を買う場合には、工事請負契約ではなく「不動産売買契約」、つまり売買契約書によって、すでにある建物が確実に手に入るかどうかが重要です。

 

このほかに、宅地建物取引業法では、売買契約を結ぶ前にその土地や建物にまつわる重要な事項を文書にして説明することを義務づけていることから、「重要事項説明書」を交付してもらうことも忘れずに。重要事項説明書は、売買契約書と重複する部分が多いので、両者の食い違いがないかチェックすることが大切です。

 

なお、売買契約で、完成前物件を買う場合(いわゆる青田買い)には、注文住宅の場合と同じように設計図書等のチェックが欠かせません。

 

売買契約書のチェックポイントは次のとおりです。
 

◆物件の表示と価格

物件の所在、地目、地積などが明記されているか。価格は明快に記載されているか。

 

◆手付金

手付金の扱いに関する条項が明記されているか(不動産業者が自社物件を売る時の手付金は売買代金の20%以内と定められている)

 

◆代金の支払、所有権移転及び引渡し時期

代金は数回に分けて支払うのが一般的、また所有権の移転および引渡しは全額支払った後が普通。融資の実行時期との関連は大丈夫か(ローン特約条項を必ず入れる)引渡し時期は明記されているか。

 

◆瑕疵担保

契約時に発見できなかった欠陥があるとき、損害賠償や契約解除の取り決めはあるか。

 

Q5図面・仕様書・見積書が簡単すぎますが、これでいいのでしょうか?

 

A5「とりあえずこれで契約を」と、急がされていませんか。急いで契約しても、早く建築できるわけではありません。きちんとした図面・仕様書・見積書がなければ建築は始まらないのです。または「いま契約すれば決算期なので安くなります、設計は後でも変更できますから」などと言われ、業者に契約を急がされていませんか。ブレーキをかけてください。一度契約した図面・仕様書・見積書は簡単には変更できません。

 

建築確認の図面だけでは通常少なすぎます。どれだけの図面があったらいいかは建築士と相談してください。建物によって異なりますから。口頭の約束では責任追及できません。図面・仕様書・見積書が整備されていれば、業者も誤魔化しやすさの程度が違います。

 

業者は契約を急がせます、と書きましたが、大きな会社になると、営業部門にのんびりした人や会社の利益を考えていないような人を配置したりもします。そういう人に出会うと、この会社なら欠陥住宅とは無縁と思ったりします。しかし、そういった営業部門と施工部門はちがいます。業者の実態を見抜くことは困難です。せめてブレーキをかけて考えてください。魅力的な謳い文句に飛びつかないで。

 

Q6工事請負契約流れを教えて下さい。

 

A6工事請負契約の流れは下記のようになります。

 

設計図書の完成

見積書の作成

予算オーバーよる設計変更

再見積書の作成

契約

 

●設計図書=大きく分けて設計図、仕様書から成り立っている。

●設計図=設計内容を図面として表現したもの

●仕様書=図面では表すことのできない事を文字で表現したもの。仕上表等。

 

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本記事は、「欠陥住宅問題に取り組む第三者検査NPO - 建築Gメンの会」のウェブサイト(https://www.kenchiku-gmen.or.jp/)から転載・再編集したものです。

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