「地盤に問題ある住宅」を掴まないため、事前調査を
欠陥住宅で最も多いのは、基礎が悪くて建物が沈下するというケースです。
適切な地盤改良を怠ったために、埋め立てられた池の形状にあわせて地盤・建物が沈下した例や、地盤調査を行わないで軟弱地盤(やわらかい地盤のこと)に住宅を建築して、新築1年目に大きな不同沈下を起こした例など、多くの被害が寄せられています。
地質調査は、施主の責任において行うものです。しかし、施主に代わって業者が行っている、というのが現実です。施主がやらなくてもいいといっても、業者は設計まで依頼されている場合、法で定めた「安全な建物を建てる義務がある」ので、地盤は施主から与えられたものだから責任がないとはいえません。
こうした地盤による建物被害にあわないためにも、宅地探しと地盤調査は慎重に行いましょう。
現地調査は「晴れの日」と「雨の日」それぞれ行う
下記の点に注意して宅地探しを行い、事前に必要な対策・工事等を把握しておきましょう。
●ステップ1:法規上の確認をする
◆誰の土地なのか確かめる
土地登記簿を通じて、色々な権利が登記されていないかを確認します。
◆都市計画区域内の市街化調整区域には家が建てられない
家が建てられる土地は「市街化区域」に属していなければなりません。区市町村の都市計画課に出向いて確認します。指定されている市街化区域によって建ぺい率、容積率などは違います。都市計画情報は自治体によってインターネットを通じて提供されています。
◆建築協定などが組まれていないか
「建築協定」とは、建築基準法に基づくもので、建築基準法で定められた基準に上乗せする形で設けられてます。建築協定の対象地域は区市町村の条例で指定されているので事前に確認が必要です。
◆前面道路の幅員が4m以上あるか
前面道路の幅員が4m未満と狭い場合、「再建築不可物件」となる可能性があります。新たに物件を建てるためには、道路の中心線から2m下がったところから建ぺい率を求め、高さ制限を受ける斜線制限を受ける境界線を決める必要があります。
このように、道路中心線から2mの位置まで後退することを「セットバック」といいます。また、敷地が道路に2m以上接しない場合も再建築不可物件となり、新たに家を建てることはできません。
●ステップ2:土地の安全性を確認する
◆地盤の形成は大丈夫か
現地を自分の目でみて歩いて確認しましょう。晴れの日だけでなく、雨の日にも現地を訪問し、排水状況、土の濡れ具合を調べます。
◆以前はどのような土地だったか
近隣からの聞き込み、昔の地形図や文献(図書館などにある国土地理院発行の地形図、郷土資料など)から調べます。田畑、丘陵地、池・沼地、工場跡地、埋立地などは要注意です。古い地図は国土地理院のサイトでも閲覧可能です。
◆現地の災害リスクを把握しておく
災害の多い日本では、「ここに住めば絶対安全」という場所はほとんどありません。国や地方自治体が作成している地震や洪水などのハザードマップ、浸水実績図などから調べるとよいでしょう。
◆疑問を持ったら、地質に詳しい専門家の意見を聞いてみる
電話相談などの利用も効果的です。
◆丘陵地などを切り拓いた住宅地は、「切土」「盛土」のどの部分にあたるのか確認する
地山の高い部分を削り取った箇所を切土、低い部分に埋め戻した部分を盛土といいます(図表参照)。切土部を購入できた方は安心ですが、盛土部を購入した方は注意が必要です。
注意!地盤が悪ければ、工事費用も高額に…
地盤によっては、基礎の建設費が大きく膨らむことがあります。思わぬ費用を要し、建設コストの吊り上げにつながりかねません。
そのため、建物の基礎を設計する際には、設計の前提条件となる地盤調査をぜひ行いましょう。
なお、事前に地盤調査をしている場合は、売主から調査結果をみせてもらいましょう。
大川 照夫
一級建築士
特定非営利活動法人建築Gメンの会 理事長
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