長寿の夢は叶ったが…「孤独な高齢者」が急増する日本
「終活」という言葉が広く知られるようになった昨今。高齢になっても自分の子どもばかりでなく近隣の下の世代の人たちが面倒をみてくれるので死後のことなど心配する必要はない、という時代は終わりつつあります。
だからこそ、古き良き時代の「見守り」「支え合い」を基盤とした新たなシステムが必要となっているのです。各地域の「身近な終活の相談ができる人」となることで、収入源になるだけでなく、地域で支え合う仲間をつくり、人に頼られることで生きがいを持てるようになります。この自分らしく生きる新しい働き方が「終活スペシャリスト」として注目されているのです。
日本は世界でも有数の長寿国です。不老長寿はいつの時代でも人々の夢でした。いま、日本に生きる私たちは少なくとも「長寿」の夢は叶えたといえます。しかし残念なことに、長寿を素直に喜べない社会状況になっていることも否定できません。
私たち日本人が長寿を喜ぶことができなくなった理由の一つに家族形態の変化があると私は考えています。かつての日本では三世代同居が当たり前で、年老いたら楽隠居という道がありました。いいか悪いかは別として、子どものうちの誰かが家督相続をして財産の多くをもらい、その代わり親の面倒をみるというのが一般的でした。老いた親にしてみれば、経済的な心配も孤独にさいなまれることもありませんでした。日がな一日、縁側で日向ぼっこして、上げ膳据え膳で暮らせたのです。
「老いては子に従え」という有名な言葉がありますが、それを地でいっていたのがかつての日本のお年寄りなのではないでしょうか。病気をしたら同居する家族の誰かが病院に付き添ってくれて、自宅療養となったら身のまわりのお世話をしてくれて、お葬式をどうするか、どこのお墓に入るかなど考える必要もありませんでした。
しかしそんな時代は終わってしまいました。
「平成28年版厚生労働白書」によると、2015年時点で、65 歳以上の人のいる世帯数は2372万4000世帯と30年前の2倍以上に増加しています。世帯構造別の構成割合を見ると、単独世帯、いわゆる「おひとり様世帯」が26.3%で全世帯の4分の1以上を占めています。夫婦のみ世帯の「おふたり様世帯」を合わせると57.8%で半数を超える状況です。
この調査の対象年齢は「65歳以上」となっていますが、高齢になるに従い配偶者の死亡などにより独居率が高くなるという相関関係も見られることでしょう。年をとって認知力が低下して体が弱っていくなかで一人暮らしになるというのはどれほど心細いことでしょうか。
同じ厚生労働省のデータの「一人暮らし高齢者世帯が生活行動のなかで困っていること」に関する調査結果の第1位は「家の中の修理、電球交換、 部屋の模様がえ」、第2位は「自治会活動」、第3位は「掃除」でした。「おひとり様」の高齢者には、日常生活でのちょっとしたお手伝いを頼める人もいない、という孤独な様子が見てとれます。
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