「介護離職だけはやめとけ」周囲は懸命に引き留めたが
終活準備が足りていないと、どのようなトラブルが起こり得るのか、『物が捨てられない高齢の母、途方に暮れる中年の娘【終活スペシャリストの実録】』に引き続き、具体例と予防策を見ていきましょう。大切な家族につらい思いをさせないためにも、必要な準備があるはずです。
●ケース1 「母親のために介護離職をしなければよかった!」
I彦さんは早くに父親を亡くし、ずっと母親と二人暮らしでした。お付き合いしていた女性もいますが、結婚にまでは至りませんでした。肩を寄せ合うようにして生きてきた母親が糖尿病からくる慢性腎不全で人工透析をするようになったのは、いまから5年前のことです。2年前からは透析をしている病院の送迎車に乗るのも大変なくらい病状が悪化。送迎車は何十人も患者を乗せてそれぞれの家まで送迎するので、乗車時間が長く疲れてしまうのです。
I彦さんは母親の残された命は長くないだろうと覚悟しました。そして父親になにもしてやれなかったぶん、母親には心残りのないようできる限りのことをしたいと思い、会社を辞める決断をしました。周りの人たちからは「それだけはやめたほうがいい」「親は先に逝くものなのだから、自分の人生をもっと考えたほうがいいのではないか」とずいぶん引き留められましたが、I彦さんは聞く耳をもたず自分の信念を貫きました。
退職後は介護に専念するも、母親の病状は悪化の一途をたどり、1年後に亡くなりました。母親が亡くなった当初は、最後の1年間だけでも心ゆくまで介護することができてよかったと安堵の思いでいたのですが、やがてどうしようもない寂しさを感じるようになってきました。ここしばらくまともに誰かと話したことがありません。思い返してみると会社を辞めてから母親が亡くなるまでの1年半、口をきいたのは母親と母親の病院関係者だけでした。
数少ない友人たちに介護のために会社を辞めると話したとき、全員に反対され、それ以来、気まずくなって連絡を取り合うこともなくなっていました。ここに至って初めてI彦さんは母親を通してかろうじて社会につながっていたこと、そのキーパーソンというべき母親が亡くなったいま、外界と自分をつなぐものが一つもなくなってしまったことに気づき、愕然としました。
I彦さんはまだ54歳。年金が受給できるまでには11年もあります。母親の存命中は亡くなった父親の遺族年金と預貯金を取り崩しながら生活できましたが、母親亡きいま、父親の遺族年金の受給権もなくなりました。預貯金はまだ1000万円ちょっと残っていますが、とても65歳まではもちそうにありません。いますぐにでも働き始めたほうがいいことは分かっていますが、50 代半ばの自分にそうそう仕事が見つかるとも思えないと言います。周囲の意見を素直に聞いて、介護離職しなければよかったと後悔しているそうです。
介護に関して、家族、特に子ども世代がいちばんやってはいけないのが、「介護離職」です。親御さんの介護をそこまで背負ってはいけません。介護に疲れて親御さんを手にかけたなど、悲しいニュースを聞くことがありますが、どだい介護を一人で背負うのは無理なのです。
親が亡くなったあとも子どもの人生は続いていきます。自分の人生を大切にしてください。親の犠牲になってはいけません。そうならないために、日本には介護保険という社会制度があります。
一人で背負いきれないのなら「大変なんです!助けてください!」と声に出しましょう。
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