高齢世代の老後を若年世代が支えるという社会システムが、実質継続不可能になった日本。シニア層は自身の生活を社会に頼ることがむずかしくなりました。もはや多くの高齢者には、「生きている限り働き続ける」という選択肢しか残されていないのが現実です。高齢者の置かれたシビアな状況について取り上げます。

年金は2000万円の不足、退職金はピーク時の4割減

2019年6月、金融庁による「高齢社会における資産形成・管理」という報告書の「年金だけでは老後資金が足りず、30年で約2000万円の預貯金取り崩しが必要になる」という発表が、老若男女問わずたくさんの人に大きな衝撃を与えました。

 

しかもこの試算には、家の修繕費などの出費や将来的に老人ホームなどに入所することになったときにかかる費用は含まれていません。老後資金には二つの大きな柱があります。一つが年金、もう一つが退職金です。

 

退職金は終身雇用を前提としてきた日本企業特有の制度です。定年と同時に数千万円の退職金が支給され、それを老後資金に充てるというのは長いこと日本のサラリーマンの「常識」でした。しかしいま、この「常識」が通用しなくなってきています。退職金給付制度のある企業の割合が少なくなってきているのです。1992年には92%だった退職金制度がある企業の割合は、2017年度には80.5%まで低下、企業規模が小さくなるにつれて、この割合は小さくなっています。

 

また退職金の額も、ピークだった1997年の3203万円から漸減し続けており、2017年には平均で1997万円と、4割弱減少しています(金融庁金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」)。

 

金融庁のこの発表と時期を同じくして、日本経済団体連合会の中西宏明会長(当時)が「経済界は終身雇用についてもう守れないと思っている」と発言しました。

 

終身雇用の維持が難しい時代に、退職金の縮小は余儀なくされるでしょう。退職金制度はいずれなくなっていく制度であり、老後資金の柱と考えることはできない時代がもうそこまで迫っていると覚悟したほうがよさそうです。

 

昨今、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでご高齢の方が働いている姿をよく見かけます。宅配便を受け取ったとき、ドライバーの方がご高齢で驚いたという経験を多くの方がされていることでしょう。

 

なにもしないでいるよりは健康のためにもいいから、という理由で働いている方も多いと思いますが、それ以上に生活のゆとりを求めたり、あるいはもっと差し迫った経済的必要があってお仕事をされていたりする方が大勢いるのではないでしょうか。

 

たくさんの金融資産をもっているか、よほど家計管理が得意で年金収入の範囲内で不自由なく暮らせるという人でもない限り、「働かない」という選択肢はないものと考えたほうがよさそうです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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※本記事は、竹内義彦氏の著書『終活スペシャリストになろう』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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竹内 義彦

幻冬舎MC

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