業務の支払に使った…審判所は「贈与」と考えるか?
他方、平成23年4月のカネの受渡しについては、お父さんが口座振込の手続を行っており、平成24年10月のカネの受渡しについては、お母さんが口座振込の手続を行っていました。
納税者は、納税者名義の預金口座を支払口座とするクレジットカードを保有し、業務関連の支払や、ホテル利用料金・飲食代金・ネット購入代金などの支払に使用していました。
納税者は、お父さんの指示により月1回から2回程度の頻度で開催される医療専門団体の会議に出席しており、その交通費や私的な費用の支払にこのカードを使用していたのです。
つまり、納税者名義の預金口座は、お父さんの指示により行った業務に関連する費用の支払口座となっていたわけです[図表2]。そうすると、お父さんは、自分の指示に基づいて医療専門団体の会議に出席した際の、納税者の交通費などの費用を負担する目的で、このカネの受渡しを行っていたとみるのが自然です。
納税者に、実質的に贈与と同様の経済的利益が生じていたとはいえません。したがって、審判所は、このカネの受渡しにより、納税者が贈与により財産を取得したとみなすことはできないと判断して、贈与税を課す処分を取り消しました。
・納税者が用いた武器
本件において、納税者が用いた武器は、財産の分別管理です。争点は、平成23年4月と平成24年10月のカネの受渡しが贈与にあたるかどうかでした。税務当局は、納税者とお父さんとの間でカネの貸し借りに関する契約がないから、カネをあげることについて、いわずもがなの了解があったと主張しました。
しかし、カネの貸し借りに関する契約がないという事実のみから、カネをあげることについていわずもがなの了解があったとするのは、かなり無理があります。
税務当局は、厳密には贈与でなくても、実質的に贈与と同様の経済的利益が生じるから、振り込まれたカネを贈与により取得したものとみなすべきだとも主張しました。
しかし、お父さんは、自分の指示により納税者が医療専門団体の会議に出席した際の交通費などを負担する目的で、カネの受渡しをしていました。
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