「財産の分別管理」が明暗を分けた
納税者は、振り込まれたカネを特定の預金口座で管理しており、お父さんの指示により行った業務に関する費用は、そこから支払うこととしていました。
また、それとは別の機会に贈与されたカネについては、この預金口座に入金されたカネとは分けて管理していました。そのため、実質的に贈与と同様の経済的利益が生じるという主張も否定されました。
このように、財産の分別管理を武器に、カネの受渡しは実質的にも贈与ではないという事実を決めたことが、本件の勝因といえます。もし、納税者が、お父さんからもらったカネと立替払いした費用の精算で受け取ったカネを一つの預金口座にプールしていたら、どうなっていたでしょうか?
カネには、色はありません。どんな目的で受け取ったカネなのか、うまく説明しないと理解されないかもしれません。特に、費用の前渡しとして受け取ったカネについては、費用を立替払いする前に受け取っているので、もらったカネなのかそうでないのかの区別が難しくなるでしょう。
本件では、お父さんも亡くなっているので、カネを渡したお父さんに証言してもらうこともできないところでした。しかし、納税者は、お父さんからもらったカネと立替払いした費用の精算で受け取ったカネを分けて管理していたので、審判所での説明が容易になりました。
親族間では、実際上、いろんな目的でカネの受渡しが行われることがあります。その際に、もらったカネとそうでないカネをきちんと分けて管理しておくと、将来、カネをもらったかどうかが争いになったときに役に立ちます。
北村 豊
DT弁護士法人パートナー
弁護士・税理士・ニューヨーク州弁護士
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