問い詰めるのではなく、事実関係を確かめる
誰かが被相続人の預金を無断で引き出した疑いがあったとしても、預金を引き出した人を犯人扱いして問い詰めては話がまとまらなくなってしまいます。まずは、事実関係を確認することが大切です。
事実関係を確認するためには、預金を引き出した人に事情を聞くほか、通帳などで預金の取引履歴も確認します。
悪意をもって預金を横領している場合、預金を引き出した人は通帳を隠そうとします。このようなときは、銀行に預金口座の取引履歴の開示を請求することができます。手続きは銀行によって異なりますが、相続人のうちの1人が請求したのであれば問題なく開示してもらえます。
預金の無断引き出しのような相続財産の横領は、被相続人の生前に行われる場合と、相続発生後(被相続人の死後)に行われる場合があり、背景にはさまざまな事情があります。
被相続人の生前から預金が引き出されていた場合
被相続人の生前から預金が引き出されていたケースでは、次のような事情が考えられます。
1)被相続人から預金の引き出しを頼まれていた
2)被相続人から贈与された
3)実は被相続人が預金を引き出していた
4)被相続人の財産を横領していた
これらのケースごとの対処方法をお伝えします。
1)被相続人から預金の引き出しを頼まれていた
預金を無断で引き出す人は被相続人と同居していた親族であることが多いのですが、被相続人の療養看護のために必要なお金を引き出していた場合もあります。
被相続人から預金の引き出しを頼まれていたのであれば、委任契約があったかどうかを確認します。ただ、家族の預金の引き出しに委任契約を結んだり委任状を書いたりすることはあまりないため、あわせて預金の使いみちも確認します。被相続人の生活費や療養費に比べて引き出した金額が多すぎると横領が疑われます。
2)被相続人から贈与された
被相続人から贈与されたのであれば、贈与契約書があったかどうかを確認します。生前に贈与されたことが確認できれば、贈与された預金を特別受益として相続財産に加えたうえで、相続人どうしで遺産分割協議を行います。
贈与契約は口約束でも成立しますが、被相続人が亡くなった後では口約束の契約は確認できません。贈与契約書がなければ、贈与があったかどうかの判断は難しくなります。
3)実は被相続人が預金を引き出していた
事実関係を確認すると、実は被相続人本人が預金を引き出していたということもあります。被相続人が自らの意思で預金を引き出していれば問題はありません。
4)被相続人の財産を横領していた
事実関係を確認して、預金を引き出した理由に正当性がなかった場合や、預金を引き出した人が横領を認めた場合は、弁護士に相談しましょう。
預金を引き出した人を相手に民事訴訟を起こして、横領された財産を取り戻すことになります。