医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。※2015年11月時点の取材をもとに構成しておりますが、ハンガリー医科大学の「2015年から2021年の総出願者数と総入学者数」のみ、2021年5月18日時点の最新の情報を記しています。

海外大医学部を卒業した学生は日本に戻る

二つの医師免許を持つ意味

 

ハンガリーの国立大医学部では、卒業試験が医師国家試験になっており、パスしなければ、卒業も医師になることもできません。試験は6月、8月、11月の3回あり、3回不合格になると1年生からやり直さなければなりませんが、そのようなケースはほとんどないそうです。

 

試験は筆記試験が1日、その1週間後に実技と口頭試問が行なわれます。日本の医師国家試験はマークシート方式の筆記試験が3日間行なわれますから、それに比べて筆記試験の分量は少ないですが、口頭試問が多く、何を聞かれるかわからないというプレッシャーがあります。

 

その後、無事卒業した学生のほとんどが日本に戻ります。そして、日本での医師免許を得るために、6カ月間医師国家試験の勉強をします。事前にサポートとして日本の医師国家試験対策テキストをハンガリーへ送付していますが、現地ではなかなか時間を取れないようで、帰ってきてからの6カ月間が決め手になります。ほとんどの内容は英語で問われていたものが日本語になるだけなので、格別難しいという声は聞かれないようです。

 

2013年6月に卒業した1期生7人のうち、1人はイギリスの大学院へ入学。他6人のうち4人が2014年2月に行なわれた日本の医師国家試験に合格し、2人の不合格者も2015年に無事合格しました。2014年6月に卒業した2期生は13人。そのうち11人が日本の医師国家試験に合格しました。

 

現在、日本の医療は高度に発展し、高額医療制度も充実しています。いっぽうで、高齢者に対する無駄な検査や治療が増えているという指摘もあり、多くの課題を抱えています。たとえば、終末期医療についてさまざまな疑問が投げかけられていますが、医療の幅を狭めてしまえば、回復の見込みがある患者の命をあきらめてしまうことにもつながり、判断が難しいところです。

 

ハンガリーで医療を学んできた学生に話を聞いたところ、日本ほど豊かではないハンガリーでは、回復の見込みのない人には高額の医療を行なわない場合もあるそうです。そういう意味では、日本の現状は世界的に見るとかなり恵まれています。

 

これからの医師には、多様な価値観とそれに対する吸収力が求められます。6年間をハンガリーで過ごしてきた学生には、その潜在能力があり、魅力的な人材として活躍していくことが期待されています。

 

小林 公夫
作家 医事法学者

 

 

本稿は、基本的に2015年11月時点の取材をもとに構成しておりますが、ハンガリー医科大学の「2015年から2021年の総出願者数と総入学者数」のみ、2021年5月18日時点の最新の情報を記しています。その他の詳しい情報は、ハンガリー医科大学事務局にお尋ねください。

わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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