意外に多い!親が会社員の子どもの海外受験
ハンガリー医科大学事務局の石倉秀哉専務理事はこう語っています。
「これまでは、英語や学力に不安があって予備コースに入る方がほとんどでしたが、本コースに直接合格する方も増えてきました。本コース合格者は2014年12人、2015年15人です。優秀な方が海外大学医学部への進学を志望する率が高くなってきたことの現われだと思います。日本には、カナダ、アメリカ、シンガポールなどの海外高校の卒業者が一定数おり、そういう方は、より英語力を活かして医学部進学を考えることができます。とはいえ、日本の医学部合格者は9000人いるわけですから、まだまだ微々たるものですね」
さらに、2014年より、ハンガリー政府による奨学金制度も始まりました。この奨学金は、医学部6年間の授業料が免除される他に、毎月の住居・生活費の補助(約3万円)や医療保険が付与されるというものです。2015年度は、入学したほぼ全員の学生(46人)が奨学生に選ばれています。
ハンガリー国立大学医学部進学プログラムは、入学プロセス支援の他、在学中の生活上のサポートや日本の医師国家試験対策も支援するので、入学者数を大幅に増やすことはできないそうです。
「2015年から2021年までの(総出願者数、総入学者数)の数値をまとめますと、2015年(165人、72人)、2016年(171人、77人)、2017年(181人、68人)、2018年(265人、86人)、2019年(322人、86人)、2020年(302人、84人)、2021年(201人、89人)と、全体の傾向としてはかなり増加しています。本年の総出願者数については、やはり新型感染症の影響でやや減少傾向です。」(石倉専務理事)
2014年のハンガリー国立大学医学部進学プログラムへの入学志願者の内訳は高校3年生が29%、浪人生が47%、大学生・大学院生・中退者が9%、社会人7%、フリーター8%です。地域は北海道から沖縄までと幅広く、親の職業は開業医13%、勤務医17%、歯科医7%、公務員7%、団体職員7%、会社員27%、会社役員7%、自営業12 %、その他3%です。
私は最初、医師の子どもで日本の大学の医学部進学に難しさを感じた生徒が、語学も学べるという利点に惹かれて志望しているのだろう、と想像していましたが、必ずしもそうではありませんでした。
意外にも会社員の親が多く、現役の高校生が、最初から日本の大学ではなく海外の大学を選ぶパターンが多いのです。男女比は平均すると半々。1期生は女性が60〜70%でしたが、現在は男性が60〜70%となっています。
入学者のなかには、医師の夢を持ちながらも理系科目が苦手だったことから、医学部をあきらめて別の学部に進学後に再度チャレンジした女性の例もあります。金銭的に国公立医学部しか受けられない状況で、いつ合格できるか見通しが立たない日本の大学より、まったくの未知数であっても医学を学ぶチャンスをつかめる場所で挑戦しようと決意したそうです。
彼女は大学でスポーツ医学を学んだあと、学習塾でアルバイトをしながら受験勉強を進め、見事センメルワイス大に合格・卒業し、現在は日本で研修医として働いています。