人件費が膨らんでも「正社員サロン」を目指したワケ
筆者は元々、美容師ではなくお客様の目線から眺めた時に魅力がある美容室を作りたいと思っていた。美容室にお客様は何を求めるのか。もちろんスタイリストの技術は必要だけど、2時間近く過ごす場所、その時間を心安らぐ豊かなものにしたいと思うだろう。そこで重要になるのはお店の雰囲気だ。内装や設備を充実させるのはお金をかければいい。でもその店の雰囲気は、どれだけスタッフが楽しく生き生きと働いているかにかかってくる。
経営上の問題も考えて、当初は正社員と業務委託のハイブリッドサロンを作ろうとした。でもスタッフの契約形態が異なるのはトラブル発生の原因になることがわかった。業務委託だけのサロンではどうしても個人プレーになるので、目指すようなお客様へのサービスをすることができない。それに資本力に差のある大手サロンがどんどん進出する中で、彼らに対抗して業務委託契約の募集をしても勝つことはできない。
それならば正社員サロンでやっていくしかないのではないか。目指していたお客様が本当にくつろげるサロンをつくるためには、スタッフ全員が助け合って楽しい店を作ろうという気持ちにならなければいけない。
確かに全員正社員にすると人件費が膨らみ、経営を圧迫するだろう。でも薬剤ディーラーを立ち上げたことで薬剤費を削減することができた。これからもっといろいろな情報を集めて工夫していけば、利益率を上げるアイデアが浮かぶに違いない。
2017年、筆者はこれからの店舗の仕組みを考える中で、3店舗目以降のサロンはすべて正社員をメインにしたサロンにすることした。
正社員でもCIELの雇用条件は業界トップレベルだ。業務委託に見劣りすることはない。これをSNSで美容師さんたちにアピールしよう!
2016年10月に筆者は「ヤーマンの株日記」とは別に、美容室CIELの経営ブログを立ち上げていたが、ここで、CIELの給与体系がどんなに高いか、そしてここにはノルマもペナルティーもなく、求人広告どおりの雇用条件であることを繰り返しアピールしていった。
スタッフたちと行ったイベントの写真も載せて、みんながCIELで楽しく働いている様子を見せていった。そしてそれをツイッターにつなげる。フォロワーの美容師さんたちは、本当にCIELが今までの美容業界にはないようなサロンだということを拡散してくれた。
5年で「100店舗展開、利益2億円」を目標に⁉
2017年5月、難波店が軌道に乗り、薬剤ディーラーも立ち上げた効果も出て、自分で思っていた仕組みがどんどん現実のものになっていった。あれこれ問題は出てくるが、それをその都度解決して、強い仕組みを持った美容室を作り上げる。このことがとても面白いと感じるようになっていた。
最初は最大4店舗くらいの美容室を経営すればそこそこ利益も出るので、美容室経営はそれで十分だと思っていた。でもこの頃になると、事業を広げていくことの面白味を感じるようになっていた。
時は春。辛く苦しい冬――どん底から這い上がったことで、筆者には自信がつき、溢れるエネルギーを感じていた。何か次にできることがある。もっと先に進める。
そしてふと証券会社で働いていた時目にした情景を思い出した。新しく会社が上場すると、その会社の社長が東京証券取引所にある金色の鐘を打ち鳴らすセレモニーがある。この鐘は通常は年の初めと終わり―大発会、大納会に著名人が打ち鳴らすのみで、一般人が触れるものではない。
上場したらあの鐘が鳴らせるんだ……この時筆者の心の中に、OXY株式会社を上場しようか、という気持ちが湧いてきた。今まで作った強い仕組みでやっていけばできるんじゃないか。これ、なんだかワクワク感が身体中に広がる気がする。筆者はさっそく考え始めた。上場するためには売上高を増やして利益を上げなきゃいけない。
売り上げは80億くらい、利益は2億あればいいだろう。そのためには必要な店舗数は100くらいだろうか。これを5年くらいで達成したい。しかし、それだけのスピードで店舗を展開するだけの資金を銀行はすぐ融資してくれない。ではどうやって資金調達をすればいいのだろうか。
筆者は新たに店舗展開するための資金調達の仕組みについて調べ始めた。
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