人口の増減に関わらずどんどん増えていく「新築住宅」
筆者は、余剰住宅の問題が、今後はかなり深刻なものになるのではないかと危惧しています。どういうことなのか、これも数値で説明していきましょう。
下記のグラフを見てください。これは国土交通省が発表している新築住宅の着工戸数の推移を表したものですが、1950年代から1970年代にかけて、住宅は右肩上がりで増えています。
ベビーブームで、造っても造っても住宅が足りない、という時代でした。最も着工数が多い年では、191万戸も造っています。
1970年代に入ると、オイルショックの影響もあって、新築の着工戸数は190万戸台から130万戸台まで落ちました。その後、少しずつ景気が盛り返し、150万戸程度で推移してきましたが、バブル崩壊によってまた減っていきます。
実は、建設業界は実際の景気とは少しタイムラグがあります。バブルが崩壊したのは1992年頃といわれていますが、建設業界が一番売上げを上げたピークは1995年から1996年ぐらいなのです。
バブル崩壊後は110万〜120万戸程度で推移してきましたが、2008年のリーマンショックの影響で、79万戸まで急激に数を減らしました。そこから、2010年は81万戸、2011年は83万戸、2012年は88万戸、2013年は99万戸と、少しずつですがまた着工件数が増えてきています。
これらの数値からわかるのは、時代背景によって数値は大きく異なるものの、日本では毎年確実に新築住宅が造られているということです。つまり、住宅はどんどん増え続けているわけです。
将来的には自分の家の両隣のどちらかが必ず空き家に!?
ところで、こうした新築の着工件数は、「建築確認申請」を基にしていることから、正確な数値がわかっています。一方で、建て替えや自然災害による倒壊など、住宅の解体戸数については、正確には把握できていません。
これは推測ですが、おそらく日本全国で、年間に数十万戸程度は解体されているのではないでしょうか。
そこで、たとえばある年に100万戸の住宅が造られたとします。仮に、建て替えなどで解体される住宅が30万戸ある場合、純増する住宅の戸数は70万戸になります。解体される住宅が50万戸なら、純増する住宅の戸数は50万戸です。
ハウスメーカーやデベロッパーは住宅を造り続けています。なぜかといえば、マグロやカツオなどの回遊魚が泳ぎ続けなければ死んでしまうように、彼らは住宅を造り続けなければ、企業存続ができないからです。
となれば、毎年純増する住宅の戸数が50万戸だった場合、単純に考えて、10年後には500万戸の住戸ができあがっている計算になります。純増する住宅の戸数が70万戸の場合は、10年で700万戸です。
私は、今から6年程度はそれほど経済が悪化することはないと見ているので、2020年頃までに、毎年100万戸以上の住宅が造られていくのではないかと予想しています。
前回説明したように、2013年の時点で820万戸の住宅が余っているわけですから、この余剰住宅が毎年50万戸ずつ純増していったとすると、10年後には約1300万戸になる計算です。
しかも、この先も人口は収縮し、居住世帯も減っていきますから、増加のペースはさらに拍車をかけて上がることになります。1300万戸が1400万戸、あるいは1500万戸となってくるわけです。
仮に、居住世帯が5000万戸に対して、余剰住宅が1600万戸あるという状況になった場合、余剰住宅の割合は約30パーセントほどになります。これは具体的にどういう状況なのかというと、自分の家の両隣のどちらかは空き家になっている、ということになるのです。
いかがでしょうか。とても恐ろしい状況ですよね。けれど私は、現在820万戸ある余剰住宅が、10年後には1000万戸を軽く超えると予測しています。さらに20年後は、今の倍ぐらいの数値になっていてもおかしくないと思っているのです。