老後資金2000万円では足りない実態とは
年金額が少ない田中さんの繰下げマネー術
老後生活にはかなりお金がかかり、しかも長期にわたって資金が必要になります。なにせ人生100年時代、そこまでの資金を貯めるとなったらたいへんです。
巷では、「老後資金の準備は40歳からスタートしよう」「50歳で始めないと悲惨な老後が待っている」といった情報が飛び交っています。しかし、現実は理想どおりには進みません。50代で老後資金の準備ができなかったという人は多いのではないでしょうか。
田中さん夫婦の例を見てみましょう。田中さんは60歳定年で、65歳まで再雇用で働き、妻と2人暮らしです。夫の年金は160万円、妻の年金は50万円。退職金やこれまでの貯蓄など老後資金が2000万円です。
60代、70代は活動的で支出もやや多くなりますが、年間350万円(月額約29万円)の生活を心がけています。
それでも年金は210万円ですから、足りない分を毎年140万円ずつ貯蓄から取りくずすことになります。すると、15年後の80歳時点で、貯蓄がゼロになってしまいます。月に17万5000円の年金だけになったら、かなり厳しい生活を強いられるでしょう。
では、田中さんが繰下げ受給にチェンジした場合です。
2000万円を70歳までの生活資金に回すと、5年間で1750万円。250万円の貯蓄が残ります。これは予備費として残します。どんな場合でも、一定の予備費は必要です。
70歳に繰下げた年金の受給額は、夫が227万円、妻が71万円にアップします。年間の生活費を年金額と同じ298万円で暮らすことにしました。
残念ながら、夫婦あわせた受給月額が月に約25万円ですので、ゆとりのある生活費といわれる月額34万9000円(年額418万8000円)には10万円ほど及びません。しかし、70歳の平均消費支出の24万円をギリギリでクリアをすることができました。予備費である250万円は、若干少ないのですが、お金がどうしても必要なときには、これを取りくずして使うことができます。
以前より多少生活レベルがダウンするとはいえ、25万円が一生受け取れたら、老後生活はずっと安定すると思います。