ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

親の最期に備えて準備できることは?

親と一緒にエンディングノートを準備する

 

近年、終活が脚光を浴びています。子への迷惑も最小限に抑えるため、自分でも生前に準備を進めようというものです。代表的なものにエンディングノートがあります。自分の人生の歴史や人間関係、財産の状況や介護、葬儀に関する要望などが記せます。

 

最近の葬儀は、弔問や香典の辞退、会社や町内会との関係の希薄化や施設入居による孤立などを理由に、表立った葬儀が減り、親族のみで行う家族葬が増えています。親の立場によってはそれでも立派な葬儀を行わなければならないこともあるかもしれませんが、希望を記しておくのは後々の参考になります。

 

エンディングノートは、必要な項目がすでに記載されていて安心な市販品も多くあります。自分に合うものを購入してみましょう。人生の終わりを意識し、そのときに備える活動ですが自分の人生を振り返る良い機会でもあります。介護をしている子世代も、いつ何が起こるかはわかりません。

 

親だけに勧めると、「死ぬのを待っているのか」などと険悪になる場合もあるので、私も一緒にやるよ、くらいの気軽さでトライするのも良いかもしれません。これは、遺言書ではないので、法的な拘束力はありませんので注意してください。

 

リビング・ウィル(尊厳死などの事例宣言書)

 

リビング・ウィルとは、自分の意思で延命治療を拒み、それを文章にして表明しておくことです。父の最期は中心静脈栄養を私の意思で選択しましたが、果たして父にとって良かったのか今でも答えがありません。

 

100%希望がかなうとは言い切ませんが、親が希望するのであれば、医療情報キットの中に用紙を一緒に入れて冷蔵庫に保管しておくと突然の様態悪化のとき、第三者に伝わりやすくなります。

 

核家族では墓守も大問題

 

悩ましい問題にお墓があります。私の実家は私の祖父の死をきっかけに、静岡のお寺にお墓を建てました。今の墓守は母ですが、実質私が墓守代行をしています。

 

いつか子孫が途絶えた場合の墓守の悩みは、多くの家庭が抱えているかもしれません。永代供養や海に散骨を希望する人が年々増えているのも、お寺との付き合いやお布施などの負担が原因かもしれません。墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬というものがあります。

 

現在、先祖代々の墓地がないのであれば、先のことも考えて調べておくのもよいでしょう。

 

親の介護で感じること

 

親の介護は思いのほか、長引くことがあります。早く終わらないかなと思う半面、終わりが死を意味するのだと考えるとせつなくなります。

 

ただ、生まれてきた以上、誰にも寿命はあります。「あのとき、こうしていれば」など悔いをあげればきりがありません。私は、親の介護があまりにもつらく、他の人の状態はどうなのだろうと知りたくて、介護相談員のボランティアを始めました。認知症の人を受け入れてほしくて、認知症サポーター養成講座の講師も始めました。

 

自分自身も介護を通じて、苦労や工夫をたくさん経験しました。未熟な私が、社会貢献を意識したのは親の介護がきっかけです。親にありがとう、とやっと思えたのは10年たった頃です。私を産んでくれて、育ててくれてありがとう。
 

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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