まるで他人事…「余命僅か」でも平静保った、がん患者の最期

麻酔科医から在宅医へと転身した矢野博文氏は書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』のなかで、「最期までわが家で過ごしたい」という患者の願いを叶えるために、医師や家族ができることは何か解説しています。

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80歳・飯田さんの要望「年をとったので楽にしたい」

事前の情報では飯田さんは医者の前ではあまりしゃべらないとのことでしたが、初診時の飯田さんは多弁でした。今まで通っていた病院では世間話をしないので楽しくなかったけれど、ここでは何でも聞いてくれて楽しいとのことでした。

 

ただ、話し好きの人が話し出してどうにも止まらなくなったというのではなく、自分のことをとつとつと静かに語るという感じでした。

 

肺がん手術の後遺症で反回神経麻痺があり、声がかすれていましたが、ぽつりぽつりと多くを語ってくれました。

 

毛髪がないので帽子は脱ぎたくない。入院は嫌だった。今後は自宅で過ごしたい。排便はもう一週間ないが、出る気がしないので薬は飲まない。以前は月2回競輪に通っていたが、使うのは5000円までと決めていた。たばこもお酒も好きだったが今はやめている。高校時代はサッカーで全国大会に行った。今は特にやりたいことはないが、年をとったので楽にしたい。あとは死ぬだけ……。

甲状腺がん、肺がん、膵尾部がん…多くの病歴があった

私たちとかかわる以前に、飯田さんには多くの病歴がありました。約4年前に甲状腺がんを患い、甲状腺を全摘出しました。

 

約1年前に肺がんとなり、右肺上葉切除術+リンパ節郭清術を実施しています。そしてその手術から四カ月後に膵尾部がんと多発肝転移が見つかりました。

 

病院で化学療法を続けながら、私たちのクリニックの外来にも通院するという形でのスタートとなりました。病状は病院主治医より本人にも説明されており、余命に関しても「そう長くはない」と説明されていたようです。

食事、排便には無頓着も、重要な意思決定は「淡々と」

この初診の2週間後、飯田さんは予約時刻より早く、突然外来にやってきました。飯田さん宅を訪問した娘さんが、自宅リビングで動けなくなっていた飯田さんを発見し、外来に慌てて連れてきたのです。

 

聞けば同居している息子さんの用意する食事がほとんど食べられず、ここ数日は満足な食事ができていませんでした。排便は5日なく、ここ1カ月ほどは入浴もしていない状況でした。

 

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たんぽぽクリニック 医師

1957年7月徳島市生まれ。1982年川崎医科大学を卒業。以後病院で麻酔科医として勤務。

2005年3月よりたんぽぽクリニックで在宅医療に取り組む。休日は釣りなどをして海で過ごすことが多い。

著者紹介

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『生きること 終うこと 寄り添うこと』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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