整形外科医の片岡泰文氏は書籍『治療の痛みは喜びの涙 ある整形外科医の言いたい放題』のなかで、間違いだらけの健康常識に警鐘を鳴らしています。

 

「一日1万歩を目指そう」の恐ろしさ

■無理は負のスパイラルを生む

 

テレビなどで紹介している健康法にも、悪知識がまん延している。一番の典型とされるのが、ウォーキングで「一日1万歩を目指そう」や「1時間の早歩き」。老人に若者と同じようなことをさせようとするなんて、全くありえない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

統計では、健康な年代で且(か)つ働いている人の一日の歩数がだいたい1万歩。しかも、これは都会に住んでいる人で、歩き方も田舎の人に比べると、とても速い。都会の健康人が一日かけてやっと1万歩なのを、「朝から1万歩」「1時間歩こう」と張り切っている人の中には、朝起きて無理に歩いて疲れ、本格的に昼寝をする人も結構いる。

 

すると夕方、元気になってまた歩く。人間の体は、体温が上がると朝のスイッチが入る。夕方にスイッチを入れてしまうと、夜中は昼。夜に運動をする人は不眠症になりがちで、そして病院に行って薬をもらう。負のスパイラルだ。生活のリズムがむちゃくちゃに乱れる。ウォーキングするなら、朝の15分から最長30分程度。30分以上歩くと、ろくなことがない。

 

■ブームに騙(だま)されるな

 

ブームもある程度浸透すると、当初、強調していたことと話が変わってきている。例えば、ウォーキングは「1万歩」や「1時間の早歩き」なんてのを推奨していた。最近はテレビでも「5、6千歩」なんて言い始めているが、 少し考えれば分かること。一日1万歩なんて普通の人には無理だ。ましてや早歩きなんて、年寄りにはケガを引き寄せる要因になる。治療において、健康自慢の人やスポーツ選手の健康法を指導することは愚の骨頂。

「楽で気持ちいいサポーター」の落とし穴

■サポーターは個々に合ったものを

 

サポーター選びにも注意が必要だ。特に、スポーツ用サポーターと治療用サポーターでは、目的や効果が真逆の設定になっているものもある。治療用サポーターというのは動きに制限をかけ、膝(ひざ)とか肘(ひじ)とか、痛む箇所が簡単に曲がらないよう動きを邪魔する。痛いところを動かないようにするのが一般的だ。

 

ところが、今、テレビなんかで販売されているサポーターの中には、ストレッチ機能を持つ、いかにも曲げやすく作られているものがある。

 

「手当て」という表現があるが、痛む場所に手を当てると、痛みが引いているという感覚になる。湿布などにも同じようなことがいえて、痛いところに何か当たっているだけで、痛みが緩和されて治ったような気になる。本当は治っていないのに、痛みを少し抑えて動きやすくなると、それまで痛がって用心していた人が、そうしたサポーターを着けることで痛かったところを動かし、それで改善に向かうというメリットもある。

 

ただし、人によっては、動かさなくていいものを動かし過ぎて、悪化する人もいる。個人によって違いがあるのだ。値段の高いサポーターが、いいサポーターと思い込んでいる人も多いが、正解ではない。その症状、個人に合ったサポーターを選ばなければいけない。

 

■サポーターは楽だけど

 

サポーターを着けておくと、「楽だ」「気持ちがいい」と言う人もいる。でも、着けっぱなしの状態は良くない。スポーツ用のサポーターを着けている年寄りを見ることが多いが、スポーツ用は部位を伸ばすんじゃなくて、曲げるほうに力が働く。だから、これを着けた年寄りは、膝を曲げたまま、そのまま歩いてしまう。歩きやすいけど、膝が伸びなくなる。悪い格好でも歩ける道具に成り下がっているのだ。治療して治すという考えじゃなく、ただ単に楽にするという選択をしている。

 

*****************************

片岡 泰文

整形外科医

昭和57年3月 福岡大学医学部卒業、熊本大学麻酔科入局

昭和58年 熊本市民病院麻酔科勤務

昭和59年 熊本大学整形外科入局

昭和60年 熊本労災病院整形外科勤務

昭和61年 水俣市立湯之児病院整形外科勤務

昭和62年 国立熊本病院整形外科勤務

昭和63年~平成4年 熊本大学病院整形外科文部教官(助手)

平成5年 熊本赤十字病院整形外科勤務

平成5年12月20日 片岡整形外科開業

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『治療の痛みは喜びの涙 ある整形外科医の言いたい放題』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録