インフレ率の上昇で企業の「真価」が問われる理由

米国のインフレ圧力は高まり続けている。大規模な財政支出や緩和的な金融政策、新型コロナウイルスのワクチン接種に伴う経済正常化の進展によって、「需要拡大によるインフレ」が起こっているほか、物流網のボトルネックや資源価格の上昇など、「供給不足によるインフレ」も同時進行中だ。企業は今、インフレに対する「適応力」がより一層求められている。

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「ディマンド・プル・インフレ」と「コスト・プッシュ・インフレ」のダブルパンチ

一般的に、需要側に起因したインフレは「ディマンド・プル・インフレ」、供給側に起因したインフレは「コスト・プッシュ・インフレ」と呼ばれる。通常、これらが同時に発生することはまれだが、今回のようなアフターコロナにおける特殊な環境下では、「ディマンド・プル・インフレ」と「コスト・プッシュ・インフレ」が同時並行で進行した。その結果、インフレ率が足元で急激に上昇したと考えられる(図表1)。

 

月次、単位:%、期間:2007年1月~2021年3月 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国消費者物価指数 月次、単位:%、期間:2007年1月~2021年3月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

ISM仕入価格指数の上昇はインフレ圧力を示唆

米ISM(供給管理協会)製造業とサービス業の仕入価格指数をみると、いずれもリーマンショック前のピークに迫る勢いだ(図表2)。

 

月次、単位:%、期間:2007年1月~2021年3月 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米ISM(供給管理協会)製造業、サービス業の仕入価格指数 月次、単位:%、期間:2007年1月~2021年3月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

これは、幅広い業種でインフレ圧力が(近年まれに見るペースで)高まっていることを示唆している。また、米名目長期金利から米実質長期金利を差し引いた期待インフレ率(10年ブレークイーブン)も、リーマンショック前後の水準まで上昇していることが分かる(図表3)。市場関係者も今後インフレ率が上昇すると予想している。

 

日次、単位:%、期間:2007年1月1日~2021年5月10日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国期待インフレ率(10年ブレークイーブン) 日次、単位:%、期間:2007年1月1日~2021年5月10日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

企業はインフレから株主の利益を守ることができるのか?

企業にとって仕入価格の上昇は、コスト高を意味する。そのコスト高を販売価格に転嫁(値上げ)できなければ、利益は減少してしまうことになる。そのため、株主の利益を守るためにも、販売価格の値上げは欠かせない。

 

しかし、すべての企業が値上げを実行できるわけではない。自社の製品やサービスに訴求力が無ければ、容易に顧客離れを引き起こしてしまうからだ。ブランド力や商品開発力、マーケットシェアなど、総合的な競争優位性が求められる。

 

急激にインフレ率が高まる局面では、インフレに対する企業の「適応力」がより重要になる。顧客から真に必要とされる企業なのか、そして株主利益をインフレから守ることができる企業なのか、その「真価」が問われることになるだろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インフレ率の上昇で企業の「真価」が問われる理由』を参照)。

 

(2021年5月12日)

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社 

ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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