「社員は不安のどん底」……。1980年の創業以来、石油ボイラーの販売を手掛けてきた長府工産。市場の変化に耐えられず、業績は低迷、退職者も続出していた。倒産寸前の同社が立て直しのために呼んだのは、「私は退きます」と、2年ほど前に会社を去っていた元専務の伊奈紀道氏。同氏の経営手腕はいかほどだったのか。ノンフィクション作家である神山典士が取材した。

世の中にキャッチアップする…「業績低迷に区切りを」

伊奈の決断は早かった。2007年の「石油ボイラー以外の商品を扱う」宣言以降も翌2008年には営業推進部を新設。事業所の統廃合を含めて営業部が働きやすいように環境を整え、「オール電化」の商品を扱う体制作りを2年間かけて行った。

 

この年には社員全員が集まる年に一度の全社会議で、伊奈は「わが社はエコ関連の商品を扱うことで、CO2削減に貢献しながら地球環境を守ります」と発表した。それ以前はテレビのニュースや新聞から世界レベルの環境保全の話題が流れるたびに、営業マンたちはそれまでに扱っている商材だけでは不安だったのだ。

 

だがこの宣言によって、「環境保護の流れに乗った会社」と胸を張ることができる。伊奈の言葉は営業マンを鼓舞するなによりのメッセージだった。さらに前述のように、2009年からは太陽光発電関連の商品の取り扱いも増えた。FITを含めて経済産業省の補助金が出ることをめざとく察知し、この市場が伸びる前に手を着けたのだ。

 

2011年には中期ビジョンで「今後は強制循環式太陽熱温水器等を作っていく」と宣言。休むことなく世の中にキャッチアップしていくことを内外に示した。

 

これらの営業政策が功を奏して、2009年からは飛躍的に売上が伸びた。エコキュートなどは伊奈が戻る前から細々と扱ってはいたが、伊奈が大胆な方針をとったことでエコキュートやIHクッキングヒーター等、オール電化商品のラインナップが揃った。2009年11月からFIT政策もスタートし、太陽光発電も、そこからメイン商材として扱うことになる。

 

なによりも一新されたのは「人心」だった。もはや社内で後ろ向きの言葉を言う者は誰もいなくなった。

 

「なにものにも制限されずに市場のニーズに応えればいい。営業部隊は本格的に売れるものを売っていこう。商品開発や人的投資、営業の多角化にも突き進もう」

 

長府工産は数年間にわたる低迷に区切りをつけて、全社一丸となって邁進する体制が整った。もちろん2009年からは黒字経営に戻った。伊奈の再登場からわずか2、3年でのこの変化。井村にしても山本にしても、まるでマジックにかかったような日々だった。

 

 

神山 典士

ノンフィクション作家

 

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