かつて、高度成長を生み出した「旧日本式経営」はバブル期の崩壊とともに瓦解し、日本企業は欧米の「新自由主義」に飲み込まれました。その過程を見ていきましょう。

「終身雇用」と「住宅ローン」が生んだ経済成長

かつて60~70年代の高度成長を生み出した「日本式経営」では、「社員は会社のもの」だった。社員は一度入社すれば「終身雇用制」に守られて一生その会社に尽くし、「年功序列」のシステムの中で収入も(欧米の企業と比べたら相当低額だが)一生保障された。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

多くの社員は社宅に住み、上司や同僚の家族と隣接した住環境をあてがわれた。一見社会人として生きやすい環境にも思える。

 

だがそこには「反作用」もある。

 

会社に生涯を捧げ日常的にも社宅に住む以上、夫が会社で上司に尽くすだけでなく、妻もまた社宅で上司の妻に尽くさなければならない。そのヒエラルキーは子どもにまで及び、学校でも上司の子どもには頭が上がらないという悲劇も少なくなかった。

 

家族が死ねば葬式の一切を会社の部下が仕切り、夏休みや冬休みも会社の保養所で上司や同僚、部下の家族たちと過ごす。給料もボーナスの額もお互いに「分かって」いて、乗っている車(入社時はキャロル、スバル、中間管理職になるとコロナ、サニー、出世するとスカイライン、役職になるとセドリック、社長になるとクラウンなど)で会社でのポジションも収入状態も一目瞭然。スーツの胸につけた会社のバッヂが何よりの「忠誠の証」だったのだ。

 

その単一価値的な思考は日本の国づくりにも言える。

 

この時代には、「幸せ」をつかむには「上り列車に乗る」という「方程式」があり、地方からの集団就職列車で多くの若者が都会(=中央)へ送り込まれた。

 

それを可能にしたのは明治維新以降150年間(唯一第二次世界大戦の末期を除いて)、ずっと右肩上がりで人口が増加した、世界的に見ても希有な国家構造にあった。

 

日本政府は「人、モノ、金、情報」のすべてを一度「中央=東京」に集め、そこから地方にばらまく(例えば地方交付税交付金)「一極集中政策」を採った。

 

その象徴がサラリーマンの源泉徴収システムであり、戦後にわかに奨励された持ち家制度によって生じた「住宅ローン」だった。

 

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