テレワークや時差出勤、マスク、消毒、手袋…。巷では多くのコロナ感染対策が取られていますが、実はあまり意味を為していないものも存在します。感染対策はシンプルです。なにを優先すべきなのか、対策の基本について感染症医が解説していきます。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

マスクは安全を担保しない…距離をとることの方が優先

感染経路の遮断について話を続けます。最も単純な方法は「なるべく外に出ないこと」ですが、職業上、毎日外に出て働かなければならない人はたくさんいます。僕自身もその1人です。外に出る場合は、人と人との距離を2メートル以上に保つのが最も有効です。

 

ソーシャルディスタンスという言葉がすっかり定着している今、2メートルという距離の根拠は多くの人の知るところでしょうが、念のため説明しておきます。

 

新型コロナウイルスの感染経路は2つあります。飛沫感染と接触感染です。まず飛沫感染ですが、飛沫というのは水しぶきのことです。感染者が咳やクシャミをすると、ウイルスを含んだ水分が拡散します。それを吸い込んだ人が新たに感染する。これが飛沫感染です。

 

最大で飛沫は約2メートル飛びます。2メートル飛んだあとは、重力に従って落下します。たとえば床に付着しているウイルスが「ひゅいーん」と飛び上がって、人間の口に入ってくる――などということは絶対にありません。

 

したがって、人との距離を2メートルで保てば、飛沫感染は防げます。2メートル以上の距離を担保できるのなら、率直に言ってマスクは必要ありません。2メートル以上の距離をどうしても確保できないときはマスクです。

 

しかしその場合は、マスクをしていても感染リスクはあります。リスク回避の優先順位は、

 

●外出しない。

●外出時は2メートル以上の距離をとる。

●2メートル以上の距離を確保できないときはマスクをする。

 

です。

 

くどいようですが、安全が担保できるのは「①外出しない」と「②外出時は2メートル以上の距離をとる」だけです。③は、正直言って気休めです。

 

距離はきわめて大切で、たとえば「2メートルは無理だけど1メートルの距離はとれる」というのなら、それでもかまいません。1メートルならリスクは半減すると思ってください。人が多い場所に行くときは、とにかく少しでも距離をとる。

 

マスクは安全を担保するものではありません。「マスクをつけているから」と、人が密集する場所に行くのは、明らかな間違いです。極端な喩え話をすると、それはドライブレコーダーを付ければ安全だと信じて、ブレーキが壊れた車に乗るようなものです。

 

大事なのはブレーキです。まずはブレーキの故障を直さないといけない。僕はよく「マスクは要るのか、要らないのか」という議論を吹っかけられるのですが、それはいわば「ドライブレコーダーは要るのか、要らないのか」というのと同じ話です。「ドラレコにはこんなに優れたところがあるんです!」と言われても、「そんなことよりも、あなたはブレーキをなおざりにしていませんか」としか言いようがありません。

 

誤解のないように言っておくと、僕は何も「マスクをするのが悪い」と言っているわけではありません。マスクをしているという理由で人との距離を2メートル未満に縮めるのは本末転倒だと言っているのです。

 

次ページ消毒すべきは手、「プラスチック板」は必要なし
僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

なぜ、ノーベル賞科学者でさえも「コロナウイルス」が分からないのか? その理由は日本人独特の「検査至上主義」にあった! 人間の体は宇宙よりも謎に満ちていて、素粒子よりも捉えがたい。そのことを知らないで、「机上の…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録