抗原検査と抗体検査はどの程度参考になるか
コロナウイルス抗原検査と抗体検査の違いについて説明します。
まず抗原検査は「その人が現在感染しているかどうか」を調べる検査です。抗原というのは人間の免疫機構が反応するターゲットとなる物質で、多くの場合は後述する抗体と結合します。コロナに関して言えば、コロナウイルスの表面にある物質(この場合はタンパク質)を「抗原」と呼んでいます。
要するに抗原があるということは、コロナウイルスがいることを示唆する(ただし、決定はしない…後述)のです。抗原検査の結果は、およそ30分で出ます。特に定性検査の場合は特別な機器を使う必要もありません。しかし、PCRよりも感度が低いという問題点があります。PCRは感度が低い検査ですが、それよりもさらに感度が低い。
ですから、僕が勤務している神戸大学病院ではほとんど使っていません。抗原検査は2020年5月に保険適用となって、実用化されています。ただ、使い方は結構難しいです。僕自身はほとんど使いません。
厚生労働省は「抗原検査が陰性かつ発症後2日目以降、9日以内の場合は新型コロナ感染がないと判断して良い」と述べていますが、これは非科学的なコメントで、端的に言って間違いです。同様に「陽性ならばコロナと判断してよい」とも述べていますが、これも間違いで、他のコロナウイルスと交叉(こうさ)反応をするなど、偽陽性問題が跡を絶ちません。
検査方法としてはPCRよりずっと簡便ですから、感染者が爆発的に増えている状況では威力を発揮するだろうと思います。事前確率が高ければ、陽性のときだけはそれなりに信用できる。ただし、陰性の場合はPCR同様、除外はできません。
次に抗体検査ですが、こちらは「その人が過去に感染していたかどうか」を調べる検査です。したがって、患者さんのケアにはまったく役に立ちません。しかし、集団の感染状況を知るためのデータとしては有効だと思います。
すでに日本では、いくつかの大規模な抗体検査が行なわれています。その陽性率は研究によって様々ですが、陽性率は1パーセント未満のものが多かった。ほぼ一貫していたのは、抗体検査が示唆した新型コロナに感染していた人は、PCRで見つかった感染者よりもずっと多かったという点です。PCR検査体制の不備のために、多くの感染者が見逃されていたのでしょう。