東京五輪でもロックダウンは可能か?感染症医が考える「コロナの抑え込み」 (※写真はイメージです/PIXTA)

東京オリンピック・パラリンピックが開催中だが東京都のコロナ感染者が急増しています。そもそもコロナのクラスター追跡が限界を迎えたとき、ロックダウンという手段がとられることとなります。日本には外出を規制する法律がないから、ロックダウンはできない。とよく言われますが、それは間違いだと感染症医は語ります。経済活動・社会活動への副作用はありますが最もパワフルなロックダウンを成功させるにはどうすればいいのでしょうか。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

濃厚接触者の追跡が不可能になったら「ロックダウン」

個々の人たちが感染経路の遮断を心がけることは、きわめて有効な感染対策です。しかし新型コロナの場合、100パーセントの遮断はなかなかできません。軽症者と無症状者が多いからです。

 

何の症状もない人たちは、もちろん仕事に行きます。学校に行きます。軽症の人たちのすべてが自宅で休むわけでもありません。だから感染終息の兆しが見えてこないわけです。

 

感染者が減らなければ、流行はいつどこで起きても不思議ではありません。今日は感染者が一人も出ていない地域であっても、1ヵ月後には感染の流行が起きているかもしれないのです。

 

では、僕たち医者はどうやって流行の始まりを察知すればいいのか。これもやはり患者さんへの聞き取りです。「ちょっと喉が痛い」とか「少し熱がある」という患者さんが病院にやって来たとき、できるだけ詳しく話を聞く。

 

「あなたは最近、出張しましたか」「あなたの家族は、最近出張しましたか」「子どもさんはいつ帰省しましたか」「子どもさんの住んでいる地域はどこですか」といった具合に、微に入り細を穿って聞かなければならないわけです。

 

その結果、その患者さんの事前確率(検査前の患者さんがその病気を持っている確率)が高いと判断できたなら、検査です。検査結果が出るまでは隔離です。そしてその人が新型コロナに感染していると診断がついたときは、濃厚接触者を追跡していく。

 

感染が疑われている人が少ないときは、こうした対策はさほど難しくはありません。とにかく徹底的に追跡して、疑わしい人には検査をして、陽性という結果が出た人は隔離すればいい。

 

これがうまくいっているかぎりは、感染の流行は防げます。どこかでクラスターが発生しても、規模が小さいうちは濃厚接触者を追いかけていって封じ込めることができます。

 

しかし、大きなクラスターが同一エリアのあちこちで発生してしまうと、追跡はできなくなります。保健所の職員が無尽蔵にいるわけではありませんから、1000人規模、1万人規模でクラスターに属さない感染者が増えてしまうと、後ろから追いかけられなくなってしまうわけです。

 

そうなったら先回りです。クラスターという事前確率が高い集団を追いかけられなくなったとき、もしくは「まもなくクラスターの追跡は限界を迎える」と判断されたときは、先回りをするしかありません。その地域に暮らしている全員を「事前確率の高い人」と見なして、町のロックダウンという手段をとることになります。

神戸大学病院感染症内科 教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。著書に『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)、『感染症は実在しない』(インターナショナル新書)、『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』(光文社新書)など多数。

著者紹介

連載感染症専門の内科医が「PCR」原理主義に反対する理由

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

なぜ、ノーベル賞科学者でさえも「コロナウイルス」が分からないのか? その理由は日本人独特の「検査至上主義」にあった! 人間の体は宇宙よりも謎に満ちていて、素粒子よりも捉えがたい。そのことを知らないで、「机上の…

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