病院の「コロナ感染者エリア」ビニールの仕切りが危険なワケ【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

感染症医である筆者は2020年1月、「武漢でジョギングはありだと思います」というツイートで炎上を経験しました。実際にリスクはありませんが、空気感染するものだと誤解していた人が多かったのです。科学的根拠なく恐れたり、あるいは安心したりするのは危険です。空気感染とはなにか、そして意味のある感染対策について見ていきましょう。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

布マスクなど「安心するが効果はない」ものに注意

ビニールのシートはまさに感染経路の遮断であるわけですが、実は病院のゾーニングではレッドゾーン(感染者がいるエリア)とグリーンゾーン(感染者がいないエリア)の境界には「ビニール」のような物理的な仕切りは、僕らは付けていません。なぜか。

 

仕切りを作ると、かえって危険だからです。たとえばビニールシートを天井から吊り下げて仕切りを作ったら、レッドゾーンに出入りする人は、その時にビニールを触ることになります。つまり接触感染のリスクが高くなる。

 

ゾーニングをするときに「何か仕切りを作ったほうがいいのではないか」という意見が出ることがあります。「レッドゾーンとグリーンゾーンの境界に何もないのは不安です」と言う人もいます。

 

しかし、ウイルスはレッドゾーンにいる患者さんからはるばる飛んでくるわけではありません。またN95マスクをしている医療従事者の呼吸や咳から、ウイルスが飛び出すわけでもない。だから仕切りはいらないわけです。

 

「そこに何もないのは不安だ」という心理は分からないではないけれども、そうした不安には耐えなければいけません。大切なのは、事実と科学にもとづいた対策です。不安をやわらげるためには、事実と科学に目を向けなければいけない。形だけの安心はかえって逆効果です。

 

典型的なのが例のアベノマスクです。布マスクには感染を防ぐ効果はまるでありません。しかし、布マスクをつけたことで安心する人がいます。布マスクが安心材料になって人との距離を縮めてしまったら、完全に逆効果です。

 

「不安はやわらげるけれど効果はない」という習慣は、徹頭徹尾、捨てなければいけません。余談ですが、武漢市で新型コロナ感染が急拡大していた2020年1月、僕はツイッターにこんな投稿をしました。

 

「武漢でジョギングはありだと思います」結果は「炎上」でした。岩田は噓つきだとかインチキだとかさんざんに言われてしまった。でも実際には武漢市における感染拡大がどんなに深刻な状況であったとしても、誰もいない夜道でのジョギングにリスクはありません。感染症学の基本を無視し、直感や雰囲気で感染リスクを断定するのは間違っています。

 

理由はさっき書いたのと同じです。そこにウイルスがいることと、感染が起こることは同じではないのです。にもかかわらず僕のツイートが炎上してしまったのは、新型コロナは空気感染するものだと誤解している人が多いからだと思います。

 

神戸大学病院感染症内科 教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長。著書に『「感染症パニック」を防げ! リスク・コミュニケーション入門』(光文社新書)、『感染症は実在しない』(インターナショナル新書)、『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』(光文社新書)など多数。

著者紹介

連載感染症専門の内科医が「PCR」原理主義に反対する理由

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

なぜ、ノーベル賞科学者でさえも「コロナウイルス」が分からないのか? その理由は日本人独特の「検査至上主義」にあった! 人間の体は宇宙よりも謎に満ちていて、素粒子よりも捉えがたい。そのことを知らないで、「机上の…

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