ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

施設職員に感謝の気持ちを忘れずに

施設のイベントには可能な限り参加を心がける

 

特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの入居施設ばかりではなく、デイサービスや小規模多機能型居宅介護など在宅支援の事業所でも、夏まつり、クリスマス会などのイベントが計画されています。このような大々的なイベントには家族を招待するので、土日に開催されることも少なくありません。お知らせがきたら、是非とも時間をやりくりして参加を検討してみてください。

 

自分がそのイベントの企画運営担当者だったら、と考えてみてください。まずは参加してくれたことに感謝! 楽しいと言ってもらえたら更に嬉しいのではないでしょうか。欠席した人より出席してくれた人に好意を持ちませんか? そして、何より家族と過ごせることを親が喜びます。

 

認知症であっても、特別に自分に接してくれる家族はわかるように思います。要介護状態になり、施設にお世話になると、一緒に外出する機会も減ってきます。年に数回、イベントに参加することは、親、自分、施設職員にとってもメリットが沢山あります。イベントは、3者のコミュニケーションの場となるのです。

 

親が入居施設にお世話になるのなら定期的な面会を心がける

 

施設職員による高齢者虐待のニュースを目にすることがあります。私は、家族の面会は直接虐待防止に結びつかなくても、虐待予防くらいにはなると信じています。何人かの介護職の知人に聞いてみました。

 

「よく面会にくる家族と全くこない家族、それによって、その親である入居者に対して感情が変わることはある?」

 

ほとんどの人が「その違いで虐待になることはないけれど、ご家族とその親に対して親近感が出てくる」と話していました。

 

人間は自分たちに協力的かつ好意的な人にいじわるはしにくいものです。家族が面会や施設のイベントに出向くだけで信頼関係ができるのなら、楽ではありませんか。介護家族側から、どれだけ歩み寄れるのかが大事だと思うのです。

 

日常会話から情報提供する

 

施設の職員は利用者と接するとき、その人の生い立ちや性格を考慮しています。“この話をすると喜ぶ”などの情報は、思いのほか役に立ちます。すごく機嫌が悪いときに、楽しい思い出の話をすると暴力などのトラブルを事前に抑えることもできるのです。

 

生徒会長だった話、社交ダンスが上手とか、親が自慢できる情報を職員に伝えておくと気にかけてくれます。時間があるときは、面会だけで帰らず、現在の状況確認や必要に応じて施設職員に情報提供もしてみてください。施設によっては親に担当職員がついているので、誰であるのかを確認し、挨拶をしておくと良いかもしれません。

 

日頃のお世話を感謝する

 

私は平日の日中、小規模多機能型居宅介護の事業所に母のお世話を依頼しています。お金を払っているのだから自分がお客様という意識は全くなく、自分が対応できない部分をお願いしていることを忘れないようにしています。お陰様でずっと仕事も続けながら、それなりに母も家族も幸せな生活ができています。

 

介護施設というのは、仕事とはいえ高齢者はわがままで大変なことも多くあります。夜勤もあるし体力も気力も使います。介護に関しては、親というひとりの人間に関わるパートナーだと感じています。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

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