医療・健康サービス付き施設の価値を高められる
サ高住のほかにもシングルマザー向けシェアハウス、メディカルエステ、医食同源をアピールするヘルシーレストランなどドクターがオーナーであることが、そのままメリットになる施設は無数に考えられます。医師だから実現できるこうしたサービスは、不動産の持つ潜在的価値を最大化させることで周辺の競合物件との差別化が図れ、同時に社会貢献にもつながるはずです。
このような医療・健康サービス付きの施設へのニーズは、今後、急速に進む高齢化や核家族化によってますます増大していきます。まさに、時代が必要としているのです。また、サ高住のような介護保険事業への展開を考えるのであれば、医療法人の設立を検討すべきです。
個人クリニックでも、保険証が使える保険医療機関であれば「みなし介護保険事業者」として、居宅療養管理指導、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどを行うことができます(いずれも介護予防含む)。本格的な介護保険事業者である介護老人保健施設や訪問看護ステーション、デイサービスなどの指定事業者になるためには、法人格を持っていることが必要です。
医療法人の設立は節税対策としても有効
医療法人の設立は、税制上や将来子どもに事業を譲る際にも有利です。
個人の所得税・住民税を合わせた最高税率は55%ですが、資本金1億円超の法人の場合は23.9%です。ただし、資本金1億円以下の場合、年800万円以下の所得金額については19%とさらに低く設定されています。さらに、2017年3月31日までは15%に引き下げられています。
また、個人クリニックの場合は「給料」という概念がないため、収入を経費として計上することはできません。しかし、医療法人なら自身を理事長、家族を理事といった肩書きにして報酬を経費にすることができるうえに、車の購入費や接待交際費など、個人経営よりも認められる経費の幅も広がります。
つまり、法人化によって勤務医としての給与と家賃収入を損益通算ができなくなるものの、別の節税が可能になるということです。ただし勤務医、特に公的医療機関に勤めている場合は、法人の役員や理事になることが禁止されています。退職を希望しないのであれば、妻や親など生計を同一とする家族になってもらえばいいでしょう。
法人化は相続税対策にも有効です。医療法人としてのクリニックや病院は、経営者が代替わりしても相続税の課税対象とはなりません。相続税の税率は最高で55%(法定相続分に応ずる取得金額6億円超)です。10億円なら5億5000万円です。これは決して無視できない金額ですから、子どもの将来のためにも、ぜひ頭に入れておくべきです。